第三章 傘の中の影

三日目の夕方、行方不明になった女性の遺体が川で発見されたとニュースが報じた。
警察は「傘を持った人物」が最後の目撃者だと発表したが、詳細は伏せられた。

薫は古本屋に再び足を運んだ。
店の奥、埃をかぶった鏡の前で、藍色の傘がまた立てかけられている。
「これ……昨日までありませんでしたよね」
薫が言うと、老婦人は驚いたように目を見開いた。
「あなた、それ……誰も持ち込んでないわよ」

ふと鏡を見ると、傘の隣に知らない女が立っていた。
顔は濡れていて、目はまっすぐ薫を見ている。
振り返ったが、そこには誰もいなかった。

傘の中から、水滴が一粒、床に落ちた。
その形は、まるで足跡のようだった。