8月26日。
退院日が、決まった。
昨日、造影剤を入れてのMRIを撮って、耳鼻科受診もした。
血管腫があった部分の空洞はあるけど、特に問題もないし、自宅での家事もリハビリになるから大丈夫だろう、ということだった。
不安と嬉しさが入り混じる。
少し前にお風呂上がりに咳が止まらなくなって、過呼吸っぽくなったことがあった。
暫くすると落ち着いたけど、まだ自分の身体を持て余してる感はどうしても拭えない。
その反面、外出と外泊で少し自信もついた。
四日前には外出許可を貰って、自宅の掃除をしてきた。
毎日空調の整った病棟で過ごしているから、自宅の暑さに、今が8月なんだと思い出した。
母に手伝ってもらいながら、窓を開けて布団を干したり、エアコンの掃除をしてから、掃除機をかけたりフローリングシートで拭いたり。
ーーあっつい…!けど、汗が気持ちいい。
入院時に持ってきてた長袖や厚めの服も持って帰ってきたり、家に風を通したり、それだけで気持ちも軽くなった。
帰りの車の中で、母がクリームパンとリープルをくれた。
助手席で、詰まらないように少しずつ口に入れる。
ーーこういう事も前は普通に出来よったんよなぁ。また、少しずつでえいから、出来るようになったらえいな。
そんな事を思いながら、自宅から病院へ戻った。
そして、退院日がちゃんと、決まった。
8月31日。
夏休み終了と一緒に、私の入院生活も終わる。
まだ日常生活が送れる自信は100%ではないけど、目指す指標がまたステップアップした気がして嬉しい決定だった。
8月15日。
よさこいは無事に終わった。
妹夫婦に迎えに来てもらって、病院の近くの商店街へ歩く。
待機中の地方車が並ぶ道にいると、娘が踊るチームの人達がちらほら現れた。
その中に娘を見つけて、声をかけるとすぐにかけ寄ってきてくれた。
写真では見てたけど、やっぱり実際に見ると嬉しくなる。よく似合ってる。
一緒に写真を撮ったり、喋っていると、いよいよ娘のチームの番になった。
娘が踊り進むのに合わせて、私もスマホで動画を撮りながら歩く。商店街の端から端まで。
娘を撮りながら、前も見ながら人を避けながら進んだけど、お祭りの雰囲気も手伝って高揚してるおかげか、目眩は出なかった。
ーー嬉しい。ちゃんと直接見れたし、いっぱい歩けた!娘にも元気な姿見せれて、すごい良かった。
それから、三日後の昨日は、入院後初の外泊。
娘を預かって貰っている妹夫婦の家に泊まってる。病院での夕食後に迎えに来てもらって、翌日の今日の朝10時半まで。
久しぶりに長い時間過ごす娘とは、なんだか人見知りなもじもじした雰囲気になる。
でも、お互いに嬉しいから、顔が緩んでる。
夜寝る時には、娘が寄ってきてくれて、くっついて寝た。
嚥下機能の影響で、睡眠時もうまく唾液が飲み込めないから、朝方は咳で目が覚めるし、痰を出すのに起きてしまう。
娘を起こさないように気をつけて動いて、またくっついて横になる。
ーー…しあわせやなぁ。
外も明るくなってきて、妹のアラームが鳴って、名残惜しく起きて、妹の作ってくれた朝ご飯をゆっくり時間をかけて食べる。
歯磨きしたり、テレビを観ながら身支度をして、荷物をしていると、だんだん病院へ帰る時間が近づいてくる。
寂しい気持ちになりながら、妹と話していると、娘がだんだん口数が少なくなってくる。態度も素っ気なくなってくる。
ーーほんまはもっと甘えたいんやろうなぁ…。早く一緒に暮らせるようにリハビリがんばらんとなぁ…!
不機嫌になった娘と一緒に後部座に乗り込んで、妹夫婦に車で病院まで送ってもらう。
病棟まで一緒に上がって、少し話して、今度は娘を見送る。
素っ気ない態度に、申し訳なさと寂しさ、と必要としてくれてる事に少しの嬉しさを感じる。
初の外泊は、短い時間だったけど、改めてリハビリを頑張る決意をしたし、少し自信にもなった。