はつこいの彼は、今の私にすごく大きな影響を与えています。
正確に言うと、あの頃の私と彼が、今の私に影響を与え続けています。
今の私の中では、あの頃の私は、
もう、まったくの別人です。
もう、長い月日が経過しているのに、
私の男性に対する考え方や、
人に接するときの、ものの考え方など、
本当に大きな影響を与えています。
私は勇気を出して、
これを、自分のトラウマなんだと認識するようにしています。
これを逃げずに認識するまでに、11年かかりました。
私たちはクリスマスの海での出来事があって以来、
何だか急いで背伸びをしはじめました。
今、考えると、
どうしてあんなに急いでいたのだろうと思います。
学校に行っても、私たちは、ほとんど一緒にいました。
そのうち、私は、好きだったテニスをやめてしまい、
彼もサッカーをやめてしまいました。
別に、お互いで決めたわけではないのですが、
お互いが勝手に、ふたりでいれる時間を増やそうとしていました。
田舎の高校なので、
私たちの存在はかなり目立っていました。
あんなに恥ずかしがり屋だった彼は、
学校から帰る時も、人が見ていても手をつなぐようになったし、
私も、なぜか、根拠もないのに、堂々とするようになっていました。
そして、今では分かるのですが、
そんな状況に、私は、少し酔っていたような気もします。
学校が終わると、
すぐにふたりで待ち合わせをして、
自転車で海に行ったり、人気の少ない公園に行ったり、
たまには、背伸びをしたり、
とにかく、近くに、近くに、近くに・・・
本当に、その頃のふたりは、
もう、ふたりの体が、ひっついていないと、
頭がおかしくなってしまうんじゃないかという状態でした。
そのうち、家に帰るのが遅くなり始めました。
田舎なので、遊ぶ場所は、ほとんどないし、
毎日ずっと一緒にいるので、
話すことも、もう残ってないのに、
ただ、ひっついていました。
両親からも、
そのことで、よく怒られるようになり、
毎日のように喧嘩をしました。
ある日、夜中の12時頃に帰ってきたとき、
お父さんから、泣きながら叩かれました。
「私は、何も悪いことしてないよ!」
と、私も涙がでました。
何となく、親の気持ちを分かっていたけど、
もう、どうしようもないところまで、きていました。
ただ、一緒にいないと、
切なくて、ちぎれそうなのです。
両親に毎日のように怒られていたのは、
私だけではなくて、
彼の方も同じでした。
一度、彼のお父さんから、うちに電話がきたことがありました。
よく話を聞いてみると、うちのお父さんの方が、
彼の家に先に電話していたのです。
「あまり、夜遅くまで、娘を連れまわさないでくれ」と。
私は、色んな人の思いを、全部、自分の中から追い出してから、
「もうみんな、ほっといてくれればいいのに」
と、思いました。
そんなことがあっても、私と彼は、
ずっと一緒にいることをやめなかったし、
そのうち、学校さえも嫌になって、
早く卒業したい気持ちでいっぱいでした。
その頃の私は、彼とこのまま一緒の大学に行って、
それで、結婚するんだろうな、
と確信していました。
彼も、よくそんなことを言っていました。
ですが、実際のところは、
彼は、私よりもだいぶ成績が良くて、
その頃、自分の成績は落ちていたので、
相当、がんばらなくてはいけなかったのです。
「もし、成績が追いつかなかったら、俺が○○ちゃんと同じ大学に行くよ」
と彼は言いました。
「そんなのダメだよ。私、がんばるから」
と、私は言いましたが、彼が本気の目で、
そう言うので、何だか、胸が締め付けられました。
私は、彼と出会うまでは、
両親とも、兄弟とも仲が良くて、
学校の友達も結構たくさんいて、
テニスも好きだったし、
どちらかというと、悩みなんて少ない方だと思って過ごしていました。
でも、彼と出会って、
彼とず~っと一緒にいて、
たくさんたくさん、やさしくしてもらっているうちに、
世の中には、こんなにも幸せなことがあるんだ。と思いました。
私は、本当に幸せでした。
本当に本当に、その場所が居心地がよかったのです。
そういう気持ちになると、
これまで自分が大事だと思っていた気持ちや、
周りの人たち、環境、
それらが、
「何て不完全であいまいなんだろう」
と見え始めました。
彼とふたりでいる時の幸福感と比べると、
私が長い間、守って、守られてきたはずの、それらが、
ものすごく、ちっぽけに思えました。
私たちは、その日、海にいました。
彼がはじめて、私の肩に触れたあの海です。
もう、私たちは、あの頃のわたしたちではありません。
私の右手と、彼の右手は、
しっかりとつなぎあっているし、
体もぴったりとつながっています。
「海はいいね。何にもしゃべらないから」
と、私は言いました。
「そうだね」
と、彼は言いました。
しばらく、水平線を眺めていました。
雲が浮かんでいたと思いますが、
私たちは、そんなことおかまいなしで、
ただ、海という風景画を借りて、
お互いを確認し合っていました。
もう、他に何も見えていなかったのです。
やがて、彼がもぞもぞとしはじめました。
「これ。プレゼント」
と、彼は言いました。
「えっ、何? 何?」
私は、それまでプレゼントを彼から貰ったことがなかったので、
すごくびっくりしました。
中を開けるとネックレスでした。
私はちゃんとしたネックレスなんて、
したことがなかったので、
つけ方が分かりませんでした。
私は、後ろを向いて、
彼につけてもらうことにしました。
首筋が見えて、恥ずかしいなと思ったのを、
今でも覚えています。
「ずっと、このまま一緒にいよう」
と、彼は耳元でささやきました。
私は、声を出すことができずに、
うん、うん、うん、と3回、心の中でうなずきました。
私は、その夜思いました。
「私という存在は、彼といれば完璧だ。もう、何もいらない」
そして、こう付け加えたのです。
「でも、ふたりっきりにしてほしい」
それからも、
どんどん、ふたりは周りから孤立していきます。
そして、もうすぐ地獄がおとずれるのです。
正確に言うと、あの頃の私と彼が、今の私に影響を与え続けています。
今の私の中では、あの頃の私は、
もう、まったくの別人です。
もう、長い月日が経過しているのに、
私の男性に対する考え方や、
人に接するときの、ものの考え方など、
本当に大きな影響を与えています。
私は勇気を出して、
これを、自分のトラウマなんだと認識するようにしています。
これを逃げずに認識するまでに、11年かかりました。
私たちはクリスマスの海での出来事があって以来、
何だか急いで背伸びをしはじめました。
今、考えると、
どうしてあんなに急いでいたのだろうと思います。
学校に行っても、私たちは、ほとんど一緒にいました。
そのうち、私は、好きだったテニスをやめてしまい、
彼もサッカーをやめてしまいました。
別に、お互いで決めたわけではないのですが、
お互いが勝手に、ふたりでいれる時間を増やそうとしていました。
田舎の高校なので、
私たちの存在はかなり目立っていました。
あんなに恥ずかしがり屋だった彼は、
学校から帰る時も、人が見ていても手をつなぐようになったし、
私も、なぜか、根拠もないのに、堂々とするようになっていました。
そして、今では分かるのですが、
そんな状況に、私は、少し酔っていたような気もします。
学校が終わると、
すぐにふたりで待ち合わせをして、
自転車で海に行ったり、人気の少ない公園に行ったり、
たまには、背伸びをしたり、
とにかく、近くに、近くに、近くに・・・
本当に、その頃のふたりは、
もう、ふたりの体が、ひっついていないと、
頭がおかしくなってしまうんじゃないかという状態でした。
そのうち、家に帰るのが遅くなり始めました。
田舎なので、遊ぶ場所は、ほとんどないし、
毎日ずっと一緒にいるので、
話すことも、もう残ってないのに、
ただ、ひっついていました。
両親からも、
そのことで、よく怒られるようになり、
毎日のように喧嘩をしました。
ある日、夜中の12時頃に帰ってきたとき、
お父さんから、泣きながら叩かれました。
「私は、何も悪いことしてないよ!」
と、私も涙がでました。
何となく、親の気持ちを分かっていたけど、
もう、どうしようもないところまで、きていました。
ただ、一緒にいないと、
切なくて、ちぎれそうなのです。
両親に毎日のように怒られていたのは、
私だけではなくて、
彼の方も同じでした。
一度、彼のお父さんから、うちに電話がきたことがありました。
よく話を聞いてみると、うちのお父さんの方が、
彼の家に先に電話していたのです。
「あまり、夜遅くまで、娘を連れまわさないでくれ」と。
私は、色んな人の思いを、全部、自分の中から追い出してから、
「もうみんな、ほっといてくれればいいのに」
と、思いました。
そんなことがあっても、私と彼は、
ずっと一緒にいることをやめなかったし、
そのうち、学校さえも嫌になって、
早く卒業したい気持ちでいっぱいでした。
その頃の私は、彼とこのまま一緒の大学に行って、
それで、結婚するんだろうな、
と確信していました。
彼も、よくそんなことを言っていました。
ですが、実際のところは、
彼は、私よりもだいぶ成績が良くて、
その頃、自分の成績は落ちていたので、
相当、がんばらなくてはいけなかったのです。
「もし、成績が追いつかなかったら、俺が○○ちゃんと同じ大学に行くよ」
と彼は言いました。
「そんなのダメだよ。私、がんばるから」
と、私は言いましたが、彼が本気の目で、
そう言うので、何だか、胸が締め付けられました。
私は、彼と出会うまでは、
両親とも、兄弟とも仲が良くて、
学校の友達も結構たくさんいて、
テニスも好きだったし、
どちらかというと、悩みなんて少ない方だと思って過ごしていました。
でも、彼と出会って、
彼とず~っと一緒にいて、
たくさんたくさん、やさしくしてもらっているうちに、
世の中には、こんなにも幸せなことがあるんだ。と思いました。
私は、本当に幸せでした。
本当に本当に、その場所が居心地がよかったのです。
そういう気持ちになると、
これまで自分が大事だと思っていた気持ちや、
周りの人たち、環境、
それらが、
「何て不完全であいまいなんだろう」
と見え始めました。
彼とふたりでいる時の幸福感と比べると、
私が長い間、守って、守られてきたはずの、それらが、
ものすごく、ちっぽけに思えました。
私たちは、その日、海にいました。
彼がはじめて、私の肩に触れたあの海です。
もう、私たちは、あの頃のわたしたちではありません。
私の右手と、彼の右手は、
しっかりとつなぎあっているし、
体もぴったりとつながっています。
「海はいいね。何にもしゃべらないから」
と、私は言いました。
「そうだね」
と、彼は言いました。
しばらく、水平線を眺めていました。
雲が浮かんでいたと思いますが、
私たちは、そんなことおかまいなしで、
ただ、海という風景画を借りて、
お互いを確認し合っていました。
もう、他に何も見えていなかったのです。
やがて、彼がもぞもぞとしはじめました。
「これ。プレゼント」
と、彼は言いました。
「えっ、何? 何?」
私は、それまでプレゼントを彼から貰ったことがなかったので、
すごくびっくりしました。
中を開けるとネックレスでした。
私はちゃんとしたネックレスなんて、
したことがなかったので、
つけ方が分かりませんでした。
私は、後ろを向いて、
彼につけてもらうことにしました。
首筋が見えて、恥ずかしいなと思ったのを、
今でも覚えています。
「ずっと、このまま一緒にいよう」
と、彼は耳元でささやきました。
私は、声を出すことができずに、
うん、うん、うん、と3回、心の中でうなずきました。
私は、その夜思いました。
「私という存在は、彼といれば完璧だ。もう、何もいらない」
そして、こう付け加えたのです。
「でも、ふたりっきりにしてほしい」
それからも、
どんどん、ふたりは周りから孤立していきます。
そして、もうすぐ地獄がおとずれるのです。