今日の夕食後の父との会話
父:「今日の肉は、柔らかくて美味しかった。
熊の肉を食ったことあるけど、 ゴムみたい。
噛み切れないから、そのまま飲み込んだ。」
私:「熊なんて食べたことあるの?
他に何の肉を食べたことあるの?
ウサギ食べたことあるって言ってたよね。」
父:「蛇を焼いて食べたり、蛙の皮をはいで食べたり。
沢ガニ。猫も食べたな。 犬は食べたことない。
ムササビも捕って食べた。猫は旨かった。
ムササビはあんまり肉がないんだ。」
私:「それっていつの話?」
父:「戦争中の食いもんがないときだな、猫や蛇は。
猫はオヤジが捕ってきた。 ムササビは自分で捕った。」
私:「ムササビってどうやって捕るの?」
父:「夜、光を当てると目が光るから、見つけたら撃つ。
三匹捕ったな、あの時は。毛皮で襟巻を作った。
ヤマドリも捕ったことがある。」
私:「ムササビは何歳の時の話?」
父:「二十代のときだな。」
初めて聞いた話だった。
私は会社勤めをしていた父しか知らないが、
父は若い頃、山で生活をしていたのだった。
口数少ない父が、珍しく語った昔話だ。
