金曜日から義父の冒険が始まるかと思うと、
夜も眠れない。
いや、嘘だ、眠れないのは冒険する義父に腹が立つからだ。
3週間前に事故であばらを5、6本折った義母が入院先から旦那の実家に帰ってくる。
病院あるあるで、介助でやっとよちよち歩けるようになったら即退院。
お金がないってこういうことなのか、なんなのか。
リハビリ用の病院は探さずに、ショートステイなどの選択肢の提案はとりあえず保留。
義父がひとりで実家で面倒をみるつもり。
布団からの立ち上がり、いやそもそも家に入るまでの段差、そして義父がきれいに敷いた5センチは段差のある敷石トラップ。
手すりのないトイレ、入院前の義父と義母の冷めきった関係。あばらを折る前から手術が必要なほど股関節の悪い義母。
「介護保険の申請は家で面倒みきれなかったらする。
俺が面倒みきれなかったらあんたに仕事辞めて見てもらうようかもしれない。」
ほう…。
失敗したらあんたに丸投げってことか。
せいぜい頑張って冒険してくださいまし。
介助用のベッドが月2000円で借りられる情報も、義父の耳には届かなかった。
せめて退院に付き添うつもりでいたら、ものすごい勢いで断られた。
「はあ?いいよ、ひとりで十分だろ。
なんでだよ、じゃあ俺行かねえよそっちが行くなら。保険の清算とかどうせわかんねえだろ。車回して送ってこれねえだろうが。」
出来るなら、一升瓶で一撃してあばらを折ってやりたい。
布団に寝るの、痛いんだぜー。
まあ昔は布団しかなかったんだからどうにかなるのかな。
でも自分だったらあんな冒険に付き合わされんのは絶対嫌だ。
義母も不安そうだった。
事故のことでみんな疲れている。
そういうことなんだ。
お金があるって安心。
そういうことなのかなあ。
まあいいや。