泉屋のクッキーは 自分で買った事はない

 

これは 贈答品で貰うものだと 子供の頃から思ってた

 

いつでもある訳では無いけれど これが届くと嬉しかった

 

母が教師だったから そんな関係で 貰っていたのかも知れない

 

母が 買ってくる事なども 一度もなかった

 

50年も60年も前の話だから 缶は貴重品で 

 

裁縫箱などにもなっていたし 写真を溜め込んだりもしていた

 

セロテープなど無かったから 缶の蓋のテープは 大事に取っていた

 

鍵っ子で 一人っ子だったから 一人でいると

 

お菓子があると 全部食べてしまう

 

母は それを知って 押入れの 布団の間に隠していた

 

それも知っているから 怒られない程度に 捜して食べていた

 

一度は 届いた時に そっと開けて

 

一番上の 一列だけを 全て食べた バレないだろうと・・・

 

勿論 母には判ってしまい 怒られた

 

泉屋のクッキーは 東京のお菓子と思っていたら

 

発祥は 京都で すでに90年以上経つ お菓子の老舗だ

 

その後東京に移り 川崎の 多摩川沿いに工場がある

 

そこを通るたびに 懐かしく 泉屋のマークを見ていた

 

クッキーは 14種類 今も昔も 変わらないのだろうか

 

袋に包まれた 生菓子のようなクッキーは 昔は無かった気がする

 

一番好きなのは ラスクのような 軽いクッキー

 

それでも 食べていると どれも美味しくて止まらなくなる

 

一番大きな リングのクッキーは 余り好まないから 最後に食べる

 

泉屋クッキーは 母との思い出がよみがえる お菓子である

 

もう 誰からも届かないだろうし 買う事もないから

 

生きている内に 食べる事は無いかも知れない