謡の教本を 初めて開いたのは 小学校4年の時だった

開いたと言っても 読める訳ではない

母の実家の座敷

上座には 祖父が座り 口述で 鶴亀を習った

 

それ青陽の 春になれば 式の節会の 事始め・・・

 

口述でも 覚えられるもので 鶴亀は全て謡えた

もう60数年前の事だ

鶴亀に続いて 橋弁慶に入ったが 途中で終る

そして その内に 祖父が亡くなった 突然だった

 

祖父は アマチュアながら 能舞台にも立つ

鉢の木の 佐野源左衛門

安宅の 武蔵坊弁慶

水道橋の 宝生能楽堂で 演じるのを見た

 

俳人でもあり 青陽人 の俳号だった

俳句の 手ほどきも受けた

4歳の時の 「おさじ コロコロ 水の中」

偉く 褒めてくれたものだった

 

晩年の句

「元日や われをしのぎし 孫の丈」

これは私を 詠んだ句だ

青陽人句集に この句が載っているのも 嬉しい

 

今すでに 祖父の歳を 超えてしまった