駅の 改札口で 彼女の来るのを待った

絶対来るはずだから 改札の奥の 階段を下りてくる人を見つめた

長い事 待った

 

そんなに 長く 人を待つ事など それまでは無かった

1時間が経ち 2時間が経ち 3時間が経つ

見間違いで もうすれ違って しまったのかも知れない

それでも 待った

 

約束をしていた訳ではない

喧嘩の後 しばらく会う事が出来ず 謝りたくて待った

喧嘩の原因は 彼女が悪い訳ではない

今になって見れば 喧嘩の原因も 

忘れてしまう程 単純なものだった

 

それが最後だった

 

何時間も 待った駅の改札口も

いつの間にか 駅舎が変って 改札口も変わった

もう 何十年も前の事

 

彼女が 結婚したと聞いた

煮え切らない 私の態度が 別れる事の原因だろう

 

その後 彼女に 子供が生まれたと聞いた

もう 完全に 手の届かない所に 行ってしまったと思った

 

何十年もの間に 何回か 彼女の夢を見た

どこか 知らない場所の すすきの生えた空き地の奥

そこにある建物に 彼女がいる

そう思って 訪ねるのだが 二階から降りて来るのは別の人

 

そこには 居ない事は判っているのに 

夢は いつの すすきの生えた空き地に 自分が立っている

いつも いつも 同じ夢は そこで途切れる

 

彼女の誕生日 1月19日は 今でも覚えている

名前も しっかり と覚えている

ただ 結婚した後の 名字は知らない

 

病院で見掛けた 看護師さん

彼女に 似て居た 思わず振り返ってみた

ただそこで 働いている訳はなかった

 

大阪で 彼女に似て居る人に 出会った

そう話をしたら 「そんなこと言わないで」と言われた

たまに出会う人だった 何度も話をした

 

数年して その人が ガンで亡くなったと聞いた

一度 お酒でも飲みましょう と約束してたのに

 

待ち人は いつも会えない様に 出来ているのかも知れない