こんな話を書きたかった訳じゃないけど、夜に眠れなくて、朝になって、何をしようかなって考えた時に、これはみんなにも話した方いいじゃないかって、みんなに話したらおもしろいんじゃないかって、思って、それで、思い立って書く事にしたんだ。

 あれはちょっと前の、まだ雪がちらつく前の、今より少し暖かい時期の、誰しもがまだ眠っていた時間の出来事なんだ。
 それは終わった夜と、これから始まる朝のちょうど間の、夜と朝の休憩時間って僕は呼んでる時間帯なんだけど。もちろん、この時間は季節によって変わるんだけど。

 僕はその日も眠れなくて、ちょっと、街の灯りが見たくて、ただ何となく、朝がくる前の街に足を向けたんだ。そこらの道には人はいなくて、本当に夜が終わって、朝がくるまでの街の休憩時間の様な時間帯だった。
 道の端にはゴミが積まれてたり、タバコや、ビールの缶が転がってたり、地面は何かで濡れていたり…ほんとみんなそのままどっかに消えちゃったんじゃないかってくらい、いつもの街と比べると静かだった。

 僕はそんな街がいつも違って、おもしろくって、おもしろくって、とにかく色々歩いて回ってたんだ。
 でね、ある通りの、通りの名前は得意じゃないから、覚えてないんだけど、、、、
とにかく、込み入った小道の先にある小道を、脇にそれて、建物と建物に挟まれた本当に狭い小道に僕はいたんだよ。

 その通りから先は、少し広、広いって行っても、車なんてうるさいものは通らないけど、店が出てたりして、昼はにぎわう通りがあるんだけど、この小道から、その通りに出るちょうどそこに人がいたんだ。

 僕は夜と朝の休憩時間にも、僕みたいに人はいるんだ。って当たり前だけど、ちょっと感心しちゃってたんだ。でその人を眺めてたんだよ。

 すると、どうも変なんだ。
 手には袋を持っていて、その中には何かが入ってそうで、それはゴミ袋くらいなんだけど、それをほぼ半分引きずりながら、その人の背はあまり高くないよ。でね、僕よりずっとやせてて、帽子をかぶってるんだけど…ってまぁいいや。

 とにかくその人は、男の人みたいなんだけど、どうも通りを何度も眺めて、何かから隠れているようだったんだ。

 顔を出して、通りを眺めては、すぐに顔を引っ込めて、また顔を出しては引っ込める。

 それを何回か繰り返し、袋を眺めて、中を探して、、、、また顔を出して引っ込める。

 それだけの動作を3分くらいかな?
 繰り返してたんだよ。

 僕は特に想像を巡らした訳じゃないんだけど、ただ変な人だなって思いながら、眺めてたんだよ。


 すると、彼は急に動き出したんだ。

 あっ。

 って思った瞬間には彼は走り出したんだ。

 走って、小道から通りに抜け出したんだ。
 僕はどおも気になっちゃって、彼が出た通りに向かって僕も走ったんだ。
 彼は僕が後をついてきてるなんて、思ってなかっただろうね。
 まず、彼を僕が眺めていた事自体、彼は気づいてなかったと思うけど。


 僕がぱっと通りに出て、見た風景はこんな感じだった。
 やはり、まだ休憩時間で誰もいない静寂なんだ。

 で、すぐに彼の姿は確認出来た。
 彼はせわしなく、一気に、すばやく動いていたんだ。

 通りを5mずつくらい走っては、袋からなんとゴミを取り出して、まいてたんだ。
でもそれだけじゃなくて、店先のゴミ箱を倒したり、木の枝を折ったり、空き缶をへこまして転がしたり、その近くにタバコの吸い殻をまいたり、靴を片方だけ置いたり、、、、

 まるでせっかく片付けたところに、おもちゃ箱をひっくり返すみたいに。といっても中身は全然おもちゃ箱のなかみじゃないんだけどね。

 とにかく、ゴミをまいたり、わざと整ったものを乱してたんだ。
 それもすごい早さでね。

 僕はその早さに、あっけにとられちゃって、怒るとか、彼を怒鳴りつけるとか、そんな事考えてられなかったんだ。ただね、散らかしてる彼だけど、とても一生懸命で、変な表現だけど、彼はがんばってたんだ。それでいてその作業は乱してるんだけど、僕にはきれいに見えたんだ。

 その彼が作業をする事で、街が街になるって不思議な感覚なんだけど。

 乱してるんだけど、それが正しくて、正しい姿に戻してるような…

 ほんと不思議な気分だった。

 数分感心して、見とれてたら、彼はもぉいなかったんだよ。

 気がついたら、見えなくなってた。
 その通りには小道がいっぱいあるから、彼は違う小道に入ったのかもって思ったんだけど、僕は探しにはいかなかったんだ。

 彼の邪魔をしちゃ悪いからね。


 これがある、夜と朝の休憩時間のお話なんだよ。
 僕はそのあと考えたんだけど、あれは彼の仕事だったと思うんだ。

 彼の仕事は休憩時間に朝を作る事。

 うん、きっとそうなんだよ。
 たぶん、料理屋さんで、まかないをつくる人がいるみたいに、彼は朝を作る人だったんだ。

 僕はそんな人を見るのは初めてで、不思議だったんだけど、おもしろかったからみんなに話したかったんだよ。

 君も一回見に行くといいよ。

 ただ時間だけは注意してね。
 その時間はちょうど、夜と朝の休憩時間だけだからね。
 今からじゃちょっと遅いかもね。

 じゃあ、また君がみかけたら教えてね。
 僕はここで失礼するよ、おやすみ。