この絵をご存じでしょうか。
子供の頭をマミり、恐怖に見開いた彼の目が私たちを捉えたその瞬間……
スペイン宮廷画家のフランシスコ・デ・ゴヤ作、『我が子を喰らうサトゥルヌス』というこの絵。
<あらすじ>
時は1792年スペイン、マドリッド。ゴヤがある二人の肖像画を描くことからこのお話は始まります。
カトリックの修道士ロレンゾ。古き良き異端審問を復活させ、教会の権勢を取り戻そうと夢見る男(ムッツリスケベ)。
そして、裕福な商人家の美しい娘、イネス・ビルバトゥア。
イネスは、キリスト教徒ですが、異端審問所に呼ばれ拷問を受け、真実ではない‘告白’を強いられます。
自分の「真実」を実行していたはずのロレンゾ、イネス、沈まないはずだった大帝国。
成功したはずの革命。守られるはずだった尊厳。それぞれの幸せ。
宗教って、自由ってなんだっけ?
牢から出たイネス、そして音を無くしたゴヤが見たものは―――。
監督:ミロス・フォアマン
制作:スペイン、アメリカ
公開:2006年
<主要キャスト>
ロレンゾ:ハビエル・バルデム
イネス:ナタリー・ポートマン
ゴヤ:ステラン・スカルスガルド
<時代背景>
1792年と言えば、日本は徳川家斉の時代。
スペインのお隣フランスでは、フランス革命戦争が勃発。ルイ16世が処刑され、周辺の王政国家が「次は我が身では……」と震えあがっていました。
「フランスの王政のように、自分たちも国民に殺されたらどうしよう!」
そんな恐怖に怯えるスペインは翌年(1793年)、王政を倒して誕生したフランス共和国と戦いますが、惨敗。
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ナポレオンを恐れたスペインはフランスと手を組み、1805年トラファルガーの海戦でフランスの敵イギリスと戦うも、敗戦してスペイン海軍は壊滅状態。
戦争のせいでスペイン経済も壊滅状態。
そんな絶体絶命なスペインを支配するため、ナポレオンはそれまでスペインを治めていたフェルナンド7世を廃し、自分の兄であるジョゼフをスペイン王ホセ1世としました。
「スペイン国民も、スペイン人でない王の支配から解放されることを望んでいる!!」
と息巻くナポレオン。
しかし、ナポレオン兄弟もスペイン人ではありません。
当然、スペイン国民は激怒。
マドリードで反乱がおこり、それがスペイン独立戦争へとつながっていく。連日、フランス軍によるスペイン国民殺戮が行われました。
スペイン・イギリス両軍の奮戦により、1814年にはついにナポレオン軍はスペイン撤退を余儀なくされ、フェルナンド7世が復位し、スペインは独立を勝ち取り、映画のストーリーは幕を閉じます。
804年にはナポレオンがフランス国皇帝に就任。span>