もう、ずいぶん昔の話に思える。深夜、二河(にこ)良は、工業地帯のコンテナーが並ぶふとうで、道路にかかる歩道橋の上に立っていた。眼下には、海岸通りと呼ばれるほぼ6kmにわたる直線道路が走っている。街路灯がわずかしかない真っ暗な道路の、はるか先に赤信号になった交差点があって、車のハザードランプがオレンジ色に点滅している。
午前1時になった。ハザードランプが消える。ヘッドライトが点灯し、ハイビームが2回、光った。それを合図に、車の爆音が夜空に大きく響く。すると、車がウィリーしたみたいにヘッドライトが少し持ち上がり、タイヤが道路の接地面と摩擦して悲鳴を上げた。車が歩道橋に向かってゆっくり走り出す。だが、ゆっくり見えたのは目の錯覚で、実際には、最低でももう時速80kmは出ていた。
