I want to return before I meet you.
(あなたと出逢う前に戻りたい。)
わたしは、一人の人間の人生を壊してしまったんだと思う。きっと修復できないくらいに。
『人間一度落ちると修復できない奴もいる。』
そう言う彼のつまづく石になったのはわたしで、出逢わなければきっと彼は今頃、全然別の人生を生きてたんだと思う。
彼の落ちてくきっかけになった。そして落ちてく彼の伸ばした手を一度ならず二度までも振りほどいた。見捨てた。
そして彼は今、消息を絶った。
彼が生きているかどうかもわからなくなった。
ただ生きていてくれればいいと思ってた。
落して、見捨てて、
それなのに都合良すぎるかな、
すごく綺麗な想いだった。
お金でも、身体の関係でもなくただ傍にいて落ち着けて楽しくて幸せだった。
若かった。確かに、若かった。
でも綺麗な想いだった。
私の前にいた彼は、私が見ていた彼は、純粋で繊細で傷つきやすくて怖がりで甘えん坊な人だった。
クリスマスイブ、再会した彼は「やり直せないかな..?」と言った。つまずいて、でも頑張って起き上がろうと精一杯誰にも頼れない彼が伸ばした私へのSOSの手を、わたしは掴まなかった。
それどころか「なんでこんな日に、」とまでも思った。
あの時ちゃんと手を掴んでいれば、変わってたのかもしれない。落ちてく彼を見放して、頑張ろうとした彼の手を掴まなかった。
そして数年後、きっと凄い勇気を出して私に送ってくれた「久しぶり」ってメッセージを、誰にも頼れない何かのSOSをまた自分の為に見なかったことにした。二度も見捨てた。
わたしの壊した人生、だけど彼はわたしを責めたりはしない。きっと今でも。
だけど、わたしに出逢わなければきっと普通に大学生して普通に就職して恋してたんだろうな、と思う。
せめて、生きててくれればいい。
でもその願いもわたしのエゴなんだろう。
願わくば、わたしと彼が出逢う前に戻りたい。
そうすれば彼の人生も変わる、わたしのこの罪悪感もなかったことになる。
でもそんなのむりだから、私の男性に対する嫌悪感や偏見、価値観を変えてくれた彼に感謝しよう。
男なんて汚い欲望の塊だ
そう思ってた私の価値観は彼と出会って変わった。ただ純粋に人を愛せる男性もいるんだ、と思った。お金でも身体でもなくただ単純に人として好きになれる人が居るんだと思った。
そう思えたのは彼がまっすぐだったから。
不器用で、でも純粋に想ってくれてたから。
純粋すぎた。
何度謝ってもきっともう届かないんだろうけど、ごめんね。
何年経っても消えない罪悪感、寧ろ消えてしまうのが怖い。
間違いなく、少なくとも彼の人生を狂わすきっかけになったのはわたしだ。ちっぽけな石、それでも人は躓き転けてしまう。きっかけはほんの小さな石だとしても。
