先日、『人の眼って心一つでこんなにも変わるのか』と考えさせられたことがありました。


1人の懲役がいて、『タケシさん』と仮で呼びます。

明るい性格かつ、自分の意見をハッキリと口にするタイプの懲役で他の懲役に対し「うるせーよ!」と平気で言えるような強気な面もあり、吊り上がった眼には鋭さもありました。

しかし、とある日…工場で事件は起きました。


他の工場から移ってきたばかりの若いイケイケキャラの懲役に向かって、タケシさんは軽い気持ちで「部屋で他人の飯とって食ってるって聞いたけど、本当?」と聞いてしまったのです。

すると、そのイケイケ君は「はっ⁉︎そんなことやってねーし、誰が言ってんだよ!」とブチ切れてしまいました。


その剣幕にビビってしまったタケシさんは「いや…ブラックさんから聞いたんだよ…」と言ってしまい、イケイケ君はすぐにブラックさんに直接確認に行きました。

ちなみにブラックさんとは、工場で力を持っている『強面の懲役』です。

そして、今度はブラックさんが「そんな事言ってねーよ、タケシの野郎…なに勝手に人の名前うたってガセ情報流してんだよ‼︎」とキレてしまったのです。


その日からブラックさんは自分の息がかかった子分たちと、イケイケ君と一緒にタケシさんをガンガン虐めるようになってしまいました。

タケシさんからすれば、本当にブラックさんから聞いた話だったとしても、権力を持つブラックさんが言ってないと言えば、言ってないことになるし…

それ以上に『懲役のタブー』をタケシさんが犯した事が一番の問題でした。


それは…『他人の名前を出す』という事です。

普通の話しの流れで名前を出すのはOKですが、何かトラブルが発生した時に今回のように他人のせいする行為は、懲役の世界では完全に『アウト』です。

それをやってしまうと必ず『ケジメ』をとらされます。


懲役のケジメは色々あるけど…今回は『作業拒否』というケジメをとるように指示されました。

作業拒否とは、朝、工場に向かう時間になっても部屋から出ずに「出役しません」と言って拒否する事で懲罰になります。

要するに「ケジメとって自ら懲罰に行ってこい」という話です。


そこでケジメをとって、翌日作業拒否すれば話は早かったのですが…タケシさんは作業拒否をせず工場に残り続けたので、彼らは更にブチ切れてしまい…

結局タケシさんへの攻撃は1年近く続きました。

そして気付くと…吊り上がって勝ち気だった眼が嘘のように眼尻が下がり、人の顔色を窺う目つきに変わっていたのです。

本当に衝撃でした。


ただ…外にいた頃は気付かなかったけど、刑務所にはこーいう眼をしている人がかなり多くて、上手く説明できませんが「眼が死んでいる」ような印象を受けます。

覇気がないと言うか…。

だからと言って、自分の眼が『生きてる』かどうか分かりませんが、これからの人生に対し、明確な『目標』は持っています。

眼から光を失ってる人の共通点って『生きる希望』みたいなものが影響している気がして…長期囚や無期囚ともなれば、そーいう気持ちになるのも分かるけど、それでも『目標に向かって生きる』って本当に大切な事だと思っています。


たかが、『眼』かもしれませんが…その人自身が持つエネルギーの強さは、眼にあらわれると思うので、目標を見失わずに全力で生活したいです。


今回も読んで頂きありがとうございました。

感謝しています。

@懲役25年受刑者