【タイトル】 魂の退社 会社を辞めるということ。

【著者】  稲垣えみ子

【出版社】 東洋経済新報社

【発売日】 2016/6/23

【読了日】 2021/12

 

【読んだきっかけ】

稲垣えみ子さんの「寂しい生活」を以前読んだとき、退職の話は「魂の退社」に詳しく書いていると記述あり。

単純に、会社を辞めるってどういうことだろう? 何をするのだろう?と、自分に知識がまったくないことに気づき、ドキュメンタリーのようなこの本を読んでみたいと思った。

 

【感想】

会社で働くことは、安定した収入が比較的望めることや、税金や保険がよくわかっていなくても会社が手続きしてくれたり、社会人として信用度が高かったり、年金制度を見てみても、日本ではメリットが大きいのだろうという話に納得。

その反面、時間や自由を捧げていることにも、納得。自身を振り返ってみても、組織で仕事をする以上、理不尽な計画変更や、いろんな人と接しながらのチームワークや人材管理の苦労など、純粋にがんばっていても通用しない、いろんなストレスもある。

 

”死のトライアングル” と書かれているが、人事異動で、周りが昇進するということは、自分には能力がないと会社に判断されているということ、でも自分は差別を疑ってしまう、しかし会社には当然制度上差別などない。会社員としては能力アップのために努力するほかない。定年まで恨みつらみなく、人事異動に心ざわつかせず、自分をコントロールしてやっていけるのか。

また、「会社員」→「定年後」は乱暴なギアチェンジではないか、とも書かれている。あくまで会社がつくった区切りであって、自分の人生に、第二の人生や、表や裏があるわけがない。定年して目標を見失う苦しさや、安定した収入が前提の消費生活からの変更の辛さなど、急なギアチェンジにならないよう、ゆるやかにシフトしていったほうがよいのではないか。

以上2点は、その通りだなと思いつつも、会社員として当然のこと・会社員とはそういうもの、と思ってしまっていた自分がいる。

 

会社を辞めることに、良い悪いはない。やることはやったと思える、会社員として十分に頑張ってきたと思えるか、どんな状況で辞めたとしても次の人生に前向きに歩き出せるかどうか。

会社に依存しない自分をつくることで、本来の仕事の喜びがよみがえるはず。「会社は修行の場であり、依存の場ではない」

心に留めておきたい。

 

とても読みやすく、理解しやすい本だった。こうあるべきという方向づけや考えを通す内容ではなく、いろんな考え方や生き方がある中、自分は何を大事にして生きるか考えてゆるやかにシフトできるよう考えよう、と思えた。