【タイトル】 カンガルー日和

【著者】 村上春樹

【出版社】 講談社(講談社文庫)

【発売日】 1986/10/15

【読了日】 2022/5

 

【読んだきっかけ】

本棚の奥に保管していた村上春樹さんの文庫本たち。20年以上経ち劣化が激しいため処分することに。処分前に、個人的再読キャンペーンを始める。

 

「カンガルー日和」を初めて読んだのは随分前、学生時代で、村上春樹さんの作品を読んだのは、おそらく「ノルウェーの森」に続き2作品目だったと思う。短編集で、目次のタイトルには、表題作「カンガルー日和」だったり、「とんがり焼の盛衰」だったりと、タイトルの意味からしてわからないものも多い。当時は読んでも、とくに感想を持たずにスルスル抜けていくものや、小説家はこういうことを考えるのだなと思ったり、これがハルキワールドか、と堪能したものの、話の内容はほぼ覚えていない。

 

【感想】

再読してみて、表題作「カンガルー日和」は内容を覚えていたが(日常の一幕のような話、オチのようなものは無い感じなので、逆に覚えていたのかも)、それ以外はやはり覚えていなかった。「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」と「1963/1982年のイパネマ娘」と「とんがり焼の盛衰」は、タイトルを見て、確か当時面白いと感じたはず、と思い出したレベル。

今回再読してみて、自身の趣味の移り変わりがあったようで、とくに好みだったものは「駄目になった王国」「とんがり焼の盛衰」「チーズ・ケーキのような形をした僕の貧乏」。

「駄目になった王国」は、最初と最後のパラグラフの間に、一見別の物語がある。読み進めて、最後のパラグラフの内容に共感、さらに”一見別の物語” の内容が響いてさらに共感が深まる。

「とんがり焼の盛衰」は、ばかばかしさ、愉快さ、爽快さが、今も面白い。

「チーズ・ケーキのような形をした僕の貧乏」は、こういう小さな思い出がいくつか自分の中にあって、たまに思い出しては、懐かしかったり、微妙な気分になったりを繰り返すのが、人生だなと思う。

 

「図書館奇譚」では、羊男が登場しドーナツをふるまってくれるのだが、これが「羊をめぐる冒険」の記憶になっており、自身の記憶誤りに気づいた。