ハリー・ポッターシリーズでは、「死」が物語全体を通して重要なテーマとして扱われている。本論文では、作中における死の描かれ方を分析し、作者が伝えようとしたメッセージについて考察する。
物語の中で、死は決して軽いものとして描かれない。ハリーの両親やセドリック・ディゴリーの死は、登場人物だけでなく読者にも大きな衝撃を与える。一方で、死を極端に恐れ、避けようとした人物がヴォルデモートである。彼は死を最大の恐怖とし、それを回避するために魂を分けるという選択をした。しかしその結果、彼は人間性を失い、孤独と破壊の道を進むことになる。
これに対し、ハリーは死を完全に否定する存在ではない。最終決戦において彼は、自ら死を受け入れる決断をする。その行為は無謀な自己犠牲ではなく、「死から逃げ続けることこそが真に恐れるべきものだ」という理解に基づいている。この対比から、作者は死そのものよりも、死を恐れるあまり他者を犠牲にする姿勢を問題視していることが分かる。
また、作中では「死者を悼むこと」と「死に執着すること」が明確に区別されている。ハリーは亡くなった人々を忘れずに生きるが、彼らを無理に蘇らせようとはしない。この姿勢は、死を受け入れつつ生を大切にする態度の象徴である。
以上より、ハリー・ポッターにおける死の描写は、死を否定する物語ではなく、死とどう向き合うかを問う物語であると言える。恐れるべきものは死そのものではなく、人間性を失うほどの恐怖なのである。