復刊されたプレティヒャ・平尾幸三訳の『中世への旅　騎士と城』(白水社2023年)をちらちら読む。騎士や城に特別興味があるわけではないが、中世に関する本を最近ずっと読んでいて、その一環として軽い気持ちで購入。数日前に郵送されてきたのだが、そのままになっていた。

　午前中、今取り掛かっているリーメンシュナイダーについての文章の構成をずっと考えていた。その中で、作品については、私が実際に見た作品に限った方が良いかと考えた。書物で見て素晴らしいと思った作品は勿論たくさんあるのだが、特に彫刻は画像だけで見るのと実際に見るのではかなり印象が違う。やはり自分で『見た』ことを大事にしたいと思った。

　リーメンシュナイダーの作品を見た場所はローテンブルクとクレクリンゲン。こちらは彼の代表作でもあるし、祭壇の構成も元のまま、参考文献も多いし、自分の考えも結構まとまっている。そしてもう一か所ハールブルクがある。現在では別な場所の美術館に移されたようだが、私がドイツを訪れた当時はハールブルク城の簡易な展示場所にあった。彩色されていて当時は、リーメンシュナイダーの作品は無彩色だと思っていたので“らしくない”

作品だと思った。いろいろ調べると、かなり初期の作品で、元は大きな祭壇の一部、再構成の試みもなされている。ブログに書いたこともある。

『リーメンシュナイダーの絵葉書』ちょっと探したら，すぐに見つかった絵葉書。まずロマンティッシュシュトラーセのもの。左上から時計回りに，ヴュルツブルク，バートメルゲントハイム，ローテンブルク，…

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『Harburgで見たリーメンシュナイダー作品』かつてドイツを訪れた時，リーメンシュナイダーの彫刻をいくつか見た。ローテンブルクやクレクリンゲンは有名だが，思いがけぬ場所で出会ったことがあった。Harbur…

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『リーメンシュナイダー⑫フランシスコ修道士会の祭壇壁』『リーメンシュナイダーとその工房』(イーリス・カルデン・ローゼンフェルト著，溝井高志訳，阪南大学翻訳叢書２３，文理閣，2012)よりローテンブルグ・オプ・デア…

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このハールブルク城とそこで見た作品について、もう少し膨らませて書こうと持っているのだが、いま一つ材料に乏しいかなあなどと思いつつ。

　午後になり、気分転換に『中世への旅　騎士と城』を手に取った。最初に城の構造について書かれていて、城砦建築のパターンを読み取った者には「石たちは突然語りはじめ、いままでは血の通わない、崩れた石の堆積に過ぎなかったものが、全く別の様相を帯び、いききと過去を語るのである。」(p28)という一文に興味を持つ。そういえば古城、古城の跡はいくつか見たけれど、建築のパターンを読み取れると楽しいだろうな。

　城を建てる場所は特に円錐形の山の頂や巨大な岩の上など周囲の地を見下ろせる場所。ヴュルツブルクのマリーエンベルク砦を連想。個々はかなり古い歴史を持ち司教の館にもなったところだが、図像のイメージがぴったりの円錐形。その他に山城と水城がある。城の周囲には堀を設け、城門の前には跳ね橋がある。城門には落とし格子があるところがある。なるほどなるほど。レゴブロックのキャッスルシリーズにもあった。次のページをめくると、なんとハールブルク城の落とし格子の1ページ大の写真が！！　午前中考えていたばかりなのに、こんな偶然があるのか？　とびっくり。これはインターネットで見つけたpublic domain の画像。

Burg Harburg, Oberes Tor mit Fallgitter

格子は木材だが、一番下の部分には、鉄が貼り付けて強化されている。ちなみに本には、怖ろしい姿だが敵の攻撃に実効性があったかどうか？という疑問が投げかけられている。ハールブルク城は、かつては観光客もほとんどいないし、さびれて建物の管理も行き届いたとは言い難い感じだったが、現在ではシュロスホテルとして、きれいに改装されているようだ。

　「中世」と「城」というキーワードなので、リーメンシュナイダーの作品とつながっていても何の不思議もないのだが、それを期待して読んだわけではないので驚いた。どちらかというと、プレティヒャの別の著作「中世への旅　農民戦争と傭兵」の方に興味があった。これは注文中でまだ来ていない。こちらも楽しみ。

というわけで、ハールブルクで見た作品について書くかどうかも迷っていたのだが、これは書けということなのかも。マリーエンベルク城塞も気になるし。またドイツ騎士団のことも後の方に書いてあるようだ。

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