イギリスで始まり、ヨーロッパに広がった蒸気機関の発明による産業革命は機械化の革命だった。続いて電気の発明が起こった。産業革命の勢いは止まらず、コンピュータ、インターネット、モバイルのIT革命が起こった。そしてすでに現代である。

 スクラム・ジャパンが立ち上がった。遺伝子変異した癌細胞の遺伝子を突き止め、そのたんぱく質だけを阻害する薬が開発され、臨床されている。変異した遺伝子を特定することが困難であるが、どんどんとそれが発見されている。変異した遺伝子を見つけ出し、それに対応する薬を作るのに、膨大な論文データが要る。その論文を読むには一人の医師では一日に1つ2つが限界であり、これまで見つけ出すのが至難のことだった。IBMが何万もの論文を読んでしまい、データ化する技術を開発した。まだ不明の癌遺伝子の3割がこれによって明らかになった。すでに7割近くまで解析されていたから残り3割のうちの3割が解析に成功したのである。アメリカが先行してプレシジョン・メディシンをリードしている。日本もスクラム・ジャパンが立ち上がった。癌治療や臨床治験はこれによって大きく変わることになる。効くかどうかわからない抗癌剤への医療費負担も少なくなる。

 これまでは臓器別の治療を縦割りで行っていたのが遺伝子レベルで行うものだから、癌変異遺伝子さえ特定できれば、甲状腺癌ように使っていたものが肺癌にも利用できるという風に横断的になるのである。

 こういうことを可能にしたのは人工知能(AI)である。分子生物学、化学、医学、ありとあらゆる研究がビッグデータとして利用される。インターネットに続く、大変革の時代を我々は生きているのである。これを「第四次産業革命」と呼ぶ人もいる。

 AIやIot(ありとあらゆるモノがインターネットに接続する世界のこと)労働や社会環境を一変させていく流れがある。将棋対決もその流れであり、物流で物を追跡していくのもその流れである。センサーとパソコンやスマホが連結していくのもその流れである。

 僕の孫の時代にはほぼ完成形となっているのだろう。

 人間とは不思議なものだ。コンピュータの出現によって人間の労働は少なくなると思っていたら、逆に、これでもか、というくらい労働時間が増えた。紙は減るのかと思ったら、大量に紙を使い続けている。便利になった分をまた仕事で埋めようとする。人間の欲望や、エロスと、悲しみや憎しみ、喜びや落胆、怒りややるせなさというような心情は古来から変わることはない。日本人にはそこに無常感や空虚感がつきまとう。紅葉を追うのも、桜で儚げを感じるのもAIやIotではどうしようもない。

 

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