緑に囲まれた帰り道。少し肌寒い季節。
美「……好き。」
今まで無言で歩いてきたのに、あなたはいきなり立ち止まった。
米「...え?」
隣を見ると、耳まで真っ赤にしたあなたが俯いていた。
美「アハハッ...いきなり気持ち悪いよね!」
あなたはこっちを向いて、私に笑いかける。
美「ごめん...」
チュッ
唇に柔らかい感触が残る。
キス...されたんだ……
美「ホントにごめん...!」
そう言ってあなたは、私を置いて走り出した。
米「美波っ!!」
美波は振り返ることなく、走っていった。
足が固まって動かない。
私にはどんどん小さくなる美波を追いかける勇気がなかった。
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美波が告白してから2週間。
私の隣に美波はいない。
美波は告白した翌日、行方不明になり、三日後に隣町の砂浜で見つかった。
死因は溺死。
足に石を縛り付けてあり、浮かないようになっていたらしい。
スクールカバンの中から遺書らしきものが見つかったことから、警察からは自殺と判断された。
私はあの日から、外へ出ていない。
外に行く理由がないから。
米「みなみぃ...会い..たいよー...」
涙が留めなく溢れてくる。
人見知りだった私は友達がなかなかできなかった。
でも、美波はたくさん話しかけに来てくれて。
いつしか一緒に居るのが当たり前になってた。
いつかは忘れたけど、たった一度だけ恋バナをした。
美「よねはさ〜、恋に性別って関係あると思う?」
誰も居ない放課後の教室。
教室がオレンジ色に染まり、優しい風がカーテンを揺らす。
米「いきなりどしたん?」
美「うーん、なんとなく?」
米「なんとなくかい!」
美「あると思う?」
米「ないんやない?」
美「だよねー」
満足気に頷くあなた。
米「好きな人でもできたん?笑」
美「まあね笑」
米「えー!誰なん?誰なん?」
美「いつか言うよ笑」
米「えー!気になるなー」
美「よねはいたことあるの?」
帰る準備をしながら、あなたは問いかけてくる。
米「あるけど、うちはキスとか無理やからなー」
美「そうなん?!」
驚いて、さっきまで動いていたあなたの手が止まる。
米「うん、無理無理!間接キスでも無理!!」
美「だから、いつも回し飲みとかしないんやね笑」
米「あれ?バレてたん?笑笑」
美「うん、華麗にスルーしとるよな?」
米「よく見とるなー!」
美「当たり前やん!」
米・美「あははは!」
教室に響く2人だけの笑い声。
楽しかったなー。あの頃は。
この頃にはもう、美波はうちのこと好きやったのかな?
キス無理とか聞いて傷ついたのかな?
気づいてあげていれば、もっと近くで美波のことを守れていたのかな?
でも、
もう戻れない。
米「ごめん...みなみ...」