緑に囲まれた帰り道。少し肌寒い季節。


美「……好き。」


今まで無言で歩いてきたのに、あなたはいきなり立ち止まった。


米「...え?」


隣を見ると、耳まで真っ赤にしたあなたが俯いていた。


美「アハハッ...いきなり気持ち悪いよね!」


あなたはこっちを向いて、私に笑いかける。


美「ごめん...」




チュッ




唇に柔らかい感触が残る。

キス...されたんだ……


美「ホントにごめん...!」


そう言ってあなたは、私を置いて走り出した。


米「美波っ!!」


美波は振り返ることなく、走っていった。

足が固まって動かない。



私にはどんどん小さくなる美波を追いかける勇気がなかった。





✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


美波が告白してから2週間。

私の隣に美波はいない。



美波は告白した翌日、行方不明になり、三日後に隣町の砂浜で見つかった。

死因は溺死。

足に石を縛り付けてあり、浮かないようになっていたらしい。



スクールカバンの中から遺書らしきものが見つかったことから、警察からは自殺と判断された。



私はあの日から、外へ出ていない。

外に行く理由がないから。


米「みなみぃ...会い..たいよー...」


涙が留めなく溢れてくる。






人見知りだった私は友達がなかなかできなかった。

でも、美波はたくさん話しかけに来てくれて。

いつしか一緒に居るのが当たり前になってた。

いつかは忘れたけど、たった一度だけ恋バナをした。





美「よねはさ〜、恋に性別って関係あると思う?」


誰も居ない放課後の教室。

教室がオレンジ色に染まり、優しい風がカーテンを揺らす。


米「いきなりどしたん?」

美「うーん、なんとなく?」

米「なんとなくかい!」

美「あると思う?」

米「ないんやない?」

美「だよねー」


満足気に頷くあなた。


米「好きな人でもできたん?笑」

美「まあね笑」

米「えー!誰なん?誰なん?」

美「いつか言うよ笑」

米「えー!気になるなー」

美「よねはいたことあるの?」


帰る準備をしながら、あなたは問いかけてくる。


米「あるけど、うちはキスとか無理やからなー」

美「そうなん?!」 


驚いて、さっきまで動いていたあなたの手が止まる。


米「うん、無理無理!間接キスでも無理!!」

美「だから、いつも回し飲みとかしないんやね笑」

米「あれ?バレてたん?笑笑」

美「うん、華麗にスルーしとるよな?」

米「よく見とるなー!」

美「当たり前やん!」

米・美「あははは!」


教室に響く2人だけの笑い声。



楽しかったなー。あの頃は。

この頃にはもう、美波はうちのこと好きやったのかな?

キス無理とか聞いて傷ついたのかな?

気づいてあげていれば、もっと近くで美波のことを守れていたのかな?



でも、
もう戻れない。









米「ごめん...みなみ...」