やっちまたなぁ、中電さん!
浜岡原発(静岡県御前崎市)の安全性を確かめる審査において不正が明らかになった中部電力(名古屋市)は、昨年11月にも浜岡原発の安全対策工事で不適切な契約が発覚したばかりだ。原子力事業の根幹に関わる問題に、地元からは怒りの声が噴出している。【道下寛子、太田圭介、真貝恒平】
中部電は昨年11月、原子力部門が2013年2月〜19年5月に、浜岡原発の安全性向上対策工事の一部で不適切な仕様変更手続きが行われていたことが発覚した。19年時点で取引先から未払いの追加費用数十億円の精算を求められていたにもかかわらず、同部門は5年以上にわたりこれを放置。問題を受け、原子力本部長の副社長ら幹部2人が引責辞任した。
この時の記者会見で中部電は、再稼働に向けた原子力規制委員会の安全審査が進む浜岡原発3、4号機について「工事そのものは適切に行われ、原発の安全性への影響はない」と強調。26年度中にも建屋や設備などの安全性を確認するプラント審査の終了が見込まれていた。
しかし今回、想定される基準地震動を意図的に過小評価したデータを規制委に提示していた疑いが発覚。原子力部門の担当者数人が関与したことを認めているといい、組織的にデータを操作していた可能性も浮上している。
問題の背景には、再稼働を急ぐ中部電の焦りがあったとみられる。東京電力福島第1原発事故後に原発の安全規制が強化される中で、浜岡原発は南海トラフ巨大地震などへの対策強化が求められ、他電力の原発に比べて安全審査が遅れていた。中部電は他電力に比べて火力発電を強化して電力供給を進めてきたが、「脱炭素」への対応などから原発再稼働を急ぐ必要に迫られていた。
原子力事業者としての深刻なガバナンス(企業統治)不全が改めて露呈したことを受け、林欣吾社長は「事業の根幹を揺るがしかねないもので、事業者としての適格性をも疑われると痛感している」と陳謝。相次ぐ不祥事が発覚した原子力部門については「解体的再構築を視野に入れ、覚悟をもって取り組む」と述べた。
不適切なデータで安全審査を通過しようとしていた疑いが発覚したことで、地元からは不安や怒りの声が上がった。
静岡県の鈴木康友知事は「県民の信頼を損なう重大事案であり、大変遺憾」などとするコメントを発表。今回の問題を受けて中部電が設置する外部の専門家による第三者委員会に対し、県として調査事項や検討内容の説明を求める姿勢を示した。また、国に対しても中部電への厳正な審査と指導、監督を求めた。
また、御前崎市議会の阿形昭(あがたあきら)市議は「自分たちの都合の良いデータを使うのは地元住民への背信行為で、重大な問題」と中部電を厳しく批判。浜岡原発が南海トラフ巨大地震の想定震源域に立地していることから「地震対策はしっかりやってほしかっただけに残念。再稼働がさらに遅れるだろう」と怒りをあらわにした。
国の原子力委員長代理も務めた長崎大学客員教授の鈴木達治郎氏(74)は、第三者委の調査結果が出るまで「再稼働に向けた動きは完全にストップするだろう」と話す。中部電に対しては「徹底した原因究明と再発防止の仕組み作りを急ぐべきだ」と注文した。
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