「じゃ、じゃあ、あなたもこの機械を?」
ぷりてぃあブラックの姿をした彼女のベルトには、逆三角形のゲーム機のようにも見える機械が取り付けられていた。
「え?なんですか、それ?」
そんな機械は見たことがない。
異世界にはゲーム機もあったのだろうか。
いや、あったにしてもこんなせっぱ詰まったときにゲーム機を見せつけてくるはずはない。
この機械は何か大事なものなのだろう。
よくはわからないけれど、彼女たちは、私とはかなり違った状況で違う世界にとばされたようだ。
だからぽよのことは何も知らないかもしれない。
知っていたにしても私が知りもしない機械を彼女たちに与えている。
私と彼女らは何かが大きく違っているように思えた。
音操はもちろん何がなんだかわからないようで、戸惑いを露わにしている。
また時間がとれるようならちゃんと説明してあげないといけないだろう。
こいつをすっかり巻き込んでしまった。
私達はしばらく、全員が何か考え込んでいるようで、黙ったまま走った。
そして、しばらく経った後、ぷりてぃあホワイトが絞り出すように声を出す。
「とにかく・・・・・・」
どうも、私以上に彼女は混乱しているようだ。
空は不気味に曇っていて、とても明るく振る舞うような気分になれない。
「私たちはこの世界から異世界に戻る方法を知りたい。だから、世界に詳しい人に会いに行く。世界を守る人のところに」
ホワイトはうつむきがちに言う。
その言葉は私に話しかけている、と言うより、自分自身に話しかけているように見えた。
「だから、神社?」
私はそう聞いてみる。
しかし私の問いに答えてくれる人はいなかった。
全員再び考え込んでいるように黙ったままでいる。
走っていたはずの私たちは、いつの間にかとぼとぼと道を歩いていた。
「あ、雨だ」
不意に今まで一言も話さなかったファイレンジャーレッドが声を上げた。
空を見上げると頬にしずくが当たった。
ついに降り始めたようだ。
面倒なことにゴロゴロという音までも聞こえ始める。
「急ごう」
ブラックが言った。
再び私たちは走り出す。
徐々に雷の音は大きさを増していく。
雨も量を増やし始めた。
私は雨や雷から逃げるかのように走る。
しかし逃げられようはずもなければ、私たちがこれから向かう先で雨をしのげるとも思えない。
空を見上げると、視線の先が強烈に光った。
思わず目をつむる。
バリバリというまず耳にしない大きな音、そして大砲の砲弾でも落ちてきたような爆音。
その合間に小さな悲鳴も聞こえた。
いつの間にか足を止めていた私は、今まで前に向かっていたことも忘れ、恐る恐る目を開ける。
視線の先、私たちが向かっていた先、建物の陰で一体どこに落ちたのかはわからなかったけれど、空に向かう煙が見えた。
しかし、状況をきちんと飲み込む間もなく、私自身が目もくらむ光に包まれる。
体がさらわれる。
痛みはない。
私の体は上から降ってきたものに反して浮き上がった。
間をおいた後離れたところから轟音が聞こえた。