Another やまっつぁん小説 -2ページ目

Another やまっつぁん小説

 このブログでは高1の描く小説をメインに載せています(主にファンタジー)。キャラ紹介などイラストも載せていきます。感想、アドバイスなどコメント気軽にどうぞ!

「じゃ、じゃあ、あなたもこの機械を?」

 ぷりてぃあブラックの姿をした彼女のベルトには、逆三角形のゲーム機のようにも見える機械が取り付けられていた。



「え?なんですか、それ?」

 そんな機械は見たことがない。

 異世界にはゲーム機もあったのだろうか。



 いや、あったにしてもこんなせっぱ詰まったときにゲーム機を見せつけてくるはずはない。

 この機械は何か大事なものなのだろう。

 よくはわからないけれど、彼女たちは、私とはかなり違った状況で違う世界にとばされたようだ。

 だからぽよのことは何も知らないかもしれない。

 知っていたにしても私が知りもしない機械を彼女たちに与えている。

 私と彼女らは何かが大きく違っているように思えた。



 音操はもちろん何がなんだかわからないようで、戸惑いを露わにしている。

 また時間がとれるようならちゃんと説明してあげないといけないだろう。

 こいつをすっかり巻き込んでしまった。



 私達はしばらく、全員が何か考え込んでいるようで、黙ったまま走った。

 そして、しばらく経った後、ぷりてぃあホワイトが絞り出すように声を出す。

「とにかく・・・・・・」



 どうも、私以上に彼女は混乱しているようだ。

 空は不気味に曇っていて、とても明るく振る舞うような気分になれない。



「私たちはこの世界から異世界に戻る方法を知りたい。だから、世界に詳しい人に会いに行く。世界を守る人のところに」

 ホワイトはうつむきがちに言う。

 その言葉は私に話しかけている、と言うより、自分自身に話しかけているように見えた。



「だから、神社?」

 私はそう聞いてみる。

 しかし私の問いに答えてくれる人はいなかった。

 全員再び考え込んでいるように黙ったままでいる。

 走っていたはずの私たちは、いつの間にかとぼとぼと道を歩いていた。



「あ、雨だ」

 不意に今まで一言も話さなかったファイレンジャーレッドが声を上げた。

 空を見上げると頬にしずくが当たった。

 ついに降り始めたようだ。

 面倒なことにゴロゴロという音までも聞こえ始める。



「急ごう」

 ブラックが言った。

 再び私たちは走り出す。



 徐々に雷の音は大きさを増していく。

 雨も量を増やし始めた。

 私は雨や雷から逃げるかのように走る。



 しかし逃げられようはずもなければ、私たちがこれから向かう先で雨をしのげるとも思えない。

 空を見上げると、視線の先が強烈に光った。

 思わず目をつむる。

 バリバリというまず耳にしない大きな音、そして大砲の砲弾でも落ちてきたような爆音。

 その合間に小さな悲鳴も聞こえた。



 いつの間にか足を止めていた私は、今まで前に向かっていたことも忘れ、恐る恐る目を開ける。

 視線の先、私たちが向かっていた先、建物の陰で一体どこに落ちたのかはわからなかったけれど、空に向かう煙が見えた。



 しかし、状況をきちんと飲み込む間もなく、私自身が目もくらむ光に包まれる。

 体がさらわれる。

 痛みはない。



 私の体は上から降ってきたものに反して浮き上がった。

 間をおいた後離れたところから轟音が聞こえた。

 一体神社に行けとはどういうことだろう。



 不思議がっていると、ぷりてぃあの二人やファイレンジャーレッドがこちらに向かってきた。

 少し遅れて音操もこちらに向かってくる。



「くろ・・・・・・違った、にゃんうーまん!リミティから話は聞いた!ここはみんなに任せて私たちは早く目的地に行こ!」

 ぷりてぃあホワイトの方があわてた様子で足踏みをしながら言う。

 当たり前と言えばそうだが、アニメとは違う声だった。



「ねぇ、神社ってどういうこと?」

 私は少し躊躇はしたものの、どうしても気になったので、思わず会話に口を挟んだ。

 すると、ぷりてぃあの二人が顔を見合わせる。



 しかしすぐに、ぷりてぃあ、今度はブラックの方が決意を固めたような顔で私の顔を見た。

「説明は移動しながらする!ついてきて!」

 彼女は素早く駆け出す。



 あわてて私はその後を追った。

 ほかの人たちも私たちに続いて駆け出す。

「あ!俺も行く!」

 音操の声が背後から聞こえた。



 少し振り返ってみると、音操が私たちとの間をどんどん詰めていくのが見え、それと対照的ににゃんうーまんがどんどん遅れていくのが見えた。

 今まで気にしていなかったけど彼女の足はとても短く、早く走れるものじゃない。



 空を見れば私たちを追いかけてきている悪魔たちもおらず、奴らは相当空の穴に何かを近づけたくないみたいだ。

 その様子を見て、私たちは少し走るスピードをゆるめた。

 どうにかにゃんうーまんが追いついてくる。



 その様子や、悪魔たちの動きをみつつ、ぷりてぃあブラックが話を始めた。

 「私たちは神様に会いに行くんだ」

 彼女の言葉に私、そして音操は言葉を失った。

 まさか神様なんて単語が出てくるとは思っていなかったからだ。



「信じてもらえないと思うけど、私たちはついさっきまでほかの世界にいた」

 とても言いづらそうな顔でホワイトが言葉を継ぐ。



 私は思わずあんぐりと口をあけてしまった。

 まさか私と同じような状況にあった人たちがほかにいようとは。



「信じます!」

 私は宣言した。

 その場にいた全員が驚いたような反応をした。

 ファイレンジャーやにゃんうーまんは顔が見えなかったけれど、動きで何となくわかる。



 まさか信じてもらえるとは思っていなかった、と言う感じだ。

 私もフレアたちの元へ行くような経験がなかったらまず信じなかったと思う。

「こちらこそ信じてもらえないかもしれませんけど、私もさっきまでこことは違う世界にいたんですよ」



 もしかしたら、みなさん私と同じ世界のどこかに同じ時間にいたのかもしれない。

 あの緑のぽよぽよのことだ。

 何かと理由をつけていろんな人を異世界にとばしていたとしても不思議はない。



 驚きつつも、どこかうれしそうにも見える表情の、ぷりてぃあブラックに扮する彼女は、おもむろに自分の腰についたベルトへ手を回した。

 近くには車が何台か、鍵が刺さったまま止まっていたので、怪我がひどい人はそれらの車に乗せ、運転できる大人に病院へとつれていってもらった。

 すぐにでも病院に行く必要があるような人以外は、近くにあったビルの中に避難してもらう。



 こうやって戦っている場所から離れた所へ人々を案内し、あまり時間がかからないうちにあらかた避難を完了した。

 そうして、音操たちの元へ戻ってみると、そこは黒い羽が宙を舞い、それが雪のように降ってくる。



 そして、地面には黒い羽と一緒に、悪魔の亡骸が散らばるというひどい有様になっていた。

 辺りには異臭が漂い、吐き気がこみ上げてくる。



「これは・・・・・・ひどい・・・・・・」

 私は思わず口元を手で覆った。

 思わず目に涙がにじむ。



 そんな私とは対照的に、あくまでもにゃんうーまんさんは冷静だった。

 取り乱しもせず、ほとんど動きもなくその場に立っている。

 何となくその着ぐるみの中に入っているのは人じゃないような気がした。

 さっきも彼女が出した光から、何かモンスターのようなものが出現したし、彼女が人じゃないことも十分あり得ると思う。



 私たちの前では変わらずヒーローたちや音操が戦い続けていた。

 視線をあげれば、そこで、あの不思議な生き物たちが戦っているのが見える。

 弾丸のように飛ぶ黒い羽や、人間ではあり得ないほど軽い身のこなしで宙を舞う女性。

 そんな姿が悪魔の隙間から時折見えた。



 私もやはり戦った方がいいんじゃないだろうか。

 音操だって戦っているのだ。

 私がこんなところで気持ち悪がって動けずにいる間にも。



 私はどうにか自分を奮い立たせ、腰に巻いた上着で固定しておいたバッチファイルを取り出す。

 こみ上げてくるものをこらえながらファイル片手に息を整えた。



 ようやく幾分か落ち着いてきたが、そのとき不意に水色の固まりが視界に飛び込んできた。

「わぁ!?ドラゴン?」



 それは明らかにドラゴンのようだった。

 大きさはかなり小さいけれど、背中に生えた翼や、がっちりとした体型。

 ゲームなんかで見たものとよく似ている。



「悪魔たちはみんな僕らをねらってる!今のうちに神社に向かって!僕らは後で合流するから!!」

 ドラゴンはにゃんうーまんに向かって、甲高い声でまくしたてた。

 よくわからないが、先に行けと言うことらしい。



 言うことを言うと何かこちらが言葉を挟む隙もなく、ドラゴンは飛び去ってしまった。

 それにしても向かえと指定された場所がかなり奇妙だ。



「神社?」

 私は思わず首を傾げた。

 にゃんウーマンからしてきたのは、どこかくぐもった音で、うまく聞き取れなかったけれど、誰か話す音っぽい。

 もしかしてにゃんうーまんが何か話そうとしたのだろうか!



 振り返ると再び何やら声が聞こえた気がした。

 しかし辺りはとても騒がしくはっきり人の声とは断定できない。

 心なしかにゃんうーまんの顔がうつむいたような気がする以外、目に見える変化もない。



 私がにゃんうーまんの顔を見つめていると、不意にその顔が上向き、目の部分にあいた小さな穴から明るい光が飛び出してきた。

「わ!」

 私は思わず目をつむり、のけぞってしまう。



 しかし、どうにか私はあわてて目を開けた。

 もしかして、中の人も何かすごい力を持っているのでは?



 けれど、目を開けた先のにゃんうーまんの顔からは何も出てなかった。

「にゃんうーまん、目からビーム出せるの?!」

 私は一体さっきの光は何なのか、とにゃんうーまんの顔をのぞき込んだが、彼女は相変わらず何も言葉を発さず、ただ勢いよく首を横に振っただけだった。



 そして、彼女は私から視線を逸らすように空の方を向き、そちらを指さした。

 何かと思ってその方向を見ると、先ほどにゃんうーまんの目から出た光が空を飛んでいた。

 光の固まりは全部で四つ。



「何あれ?!」

 あの光は一体何?



 にゃんうーまんが出したもののようだけれど、何かを攻撃するためのものなのだろうか。

 私が大きな声を上げて空を指さしたため、にゃんうーまんの周りに避難してきていた人々もどよめいた。

 光を目で追っていくと、どうも光は悪魔たちが続々飛び出してきている穴の方へ、向かっているようだ。

 しかも穴に近づくにつれて、その光は徐々に形を変えていく。



 一つは真っ黒な服を着た、人のような見た目をしたもの。

 ただ、その背中には大きな黒い翼が生えており、どう見ても人間じゃない。

 


 そして、ほかにもUFOから女の子の体が生えたような見た目の生き物とか、青いチャイナドレスを着た長い紫の髪を持つ女性とか、水色の鱗を持ったドラゴンみたいな小さな生き物に、それぞれの光は姿を変える。

 唯一飛ぶ力を持っていないらしいチャイナドレスの女性だけは黒い人に似た生き物に捕まり、空を移動していた。



 なんにしてもとても目立っている。

 悪魔が気づかないはずはなく、黙って飛んでいくのを見守っているはずもない。



 空を飛び回っていた悪魔たちは一斉に四体の不思議な生き物たちの元へと飛んでいった。

 それを見て、ファイレンジャーやらぶぴゅあが急いで援護をするけれど、あっと言う間に生き物たちの姿は黒に囲まれて見えなくなってしまう。

 もう既に私たち人間の方に攻撃してくる者はいなくなり、空に開いた穴がよほど大事なのだろう、あの不思議な生き物たちへ集中攻撃を始めた。

 ヒーローたちと音操たちは一生懸命援護している。



 そんな中、にゃんうーまんは怪我をした人を避難させ始めた。

 今悪魔たちのマークがはずれたのだ。

 この間に人々を避難させないといけない。



 私はそれを見て、にゃんうーまんの手伝いをすることにした。

 私が音操の方を振り返ると、「すげぇ、らぶぴゅあにファイレンジャーまでいる!」と、やつは周りのヒーロー達に夢中だった。

 どうも最初からにゃんうーまん達ヒーローしか見ていなかったらしい。

 まぁ、それだから彼女を救うことができたけれど、本当にまわりの壁のような悪魔を見ていなかったんだな。

 私は音操の方は放っておくことにした。



「あの、にゃんうーまんさんなら空飛べないんですか?」

 どうもファイレンジャーや、二人のヒロイン、つまり音操の言う”らぶぴゅあ”はどうも本物っぽく見える。

 だって手から炎を出したり、尋常じゃないジャンプ力を発揮しているんだもん。

 このにゃんうーまんだって、本物みたいに空を飛ぶことができたりするんじゃないかな?

 そう思ったけれど、彼女は無言で首を振った。



 そもそもこの中の人は女性なのかな?

 にゃんうーまんはその名のとおり女の子の猫だけど。



「とにかくあの穴を見てきた方がいいと思うんです。あの穴をふさがない限りは悪魔は止まらないですよ、きっと」

 敬語を使うべきか迷うところだけど、初対面の人にはまず敬語だよね。

 着ぐるみをきてるところから、大人だろうし。



 しかしにゃんうーまんは相変わらず無言。

 ただ、少し首を傾げた。

 そのまましばし間が空く。



 それにしても、着ぐるみは熱いだろうに、彼女は何も文句を言わないし、脱ぐ素振りを全く見せない。

 きっとこの人はプロだ。

 演技を徹底しているんだろう。



「にゃんうーまんさん話しませんねぇ。さすがプロですね!」 

 音操は音操で勝手に戦ってくれているし、ファイレンジャーとからぶぴゅあのみなさんもがんばってくれているし、私は少し体力を温存しておこう。

 そしてこの間に打開策を考えようじゃないか。



 それにしても、らぶぴゅあさんも強いな。

 テレビで見たような必殺技、確か何たらファイヤーだったっけ、そんな大技を披露してくれている。

 必殺技だけあって、すさまじい威力で、悪魔の壁には大穴があいた。



 すっかり目を奪われていると、背後のにゃんうーまんの方から何か声のようなものが聞こえた気がした。