巨匠市川崑が、最初に個性発揮した「恋人」以来のロマンチックコメディの秀作で、東宝初期「プーさん」を頂点とする、当時の川島雄三に比肩しうる市川喜劇の山脈を築く第一歩となった作品である。
若々しい黛敏郎のジャズを基調とした音楽とマッチし、ハリウッド製の様なドライでスピード感溢れた都会的なタッチの演出と、市川作品でお馴染みの、主演池部良、越路吹雪、山村聰が、それぞれ、刑事、スリ、流行作家を演じ、その演技が冴え渡り、伊藤雄之助、沢村貞子等助演も見事な、風俗描写の優れた鉄道ムービーである。
なお、この作品は、師匠である阿部豊のもはや現存しない代表作リメイクであり、弟子の増村保造も大映京マチ子主演リメイク作品があり、後年の岡本喜八作品に、この喜劇路線が受け継がれていく。