24才のためのドラッカーマネジメント

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【1】強みは何か

強みを知る方法

 誰でも自分の強みは分かっていると思う。たいていが間違いである。知っているのは強みというよりも強みならざるものである。それでさえ間違いのことが多い。


 何事かを成し遂げられるのは、強みによってである。弱みによって何かを行うことはできない。もちろん、出来ない事によって何かを行うことなど、とうてい出来ない。


 わずか数十年前までは、ほとんどの人にとって、自らの強みを知っても意味がなかった。生まれながらにして、仕事も職業も決まっていた。農民の子は農民となり、耕作が出来なければ落伍するだけだった。職人の子は職人になるしかなかった。


 ところが今日では、選択の自由がある。したがって、自らが属するところがどこであるかを知るために、自らの強みを知ることが必要になっている。


 強みを知る方法は一つしかない。フィードバック分析である。何かをすることに決めたならば、『何を期待するか』を直ちに書き留めておかなければならないそして九カ月後、一年後に、その期待と実際の結果を照合しなければならない。私自身は、これを五十年続けている。しかも、そのたびに驚かされている。これを行うならば、誰もが同じように驚かされるに違いない。




 (これは特に新しい手法ではない。十四世紀に、ある無名のドイツの神学者が始めたことである。

 その百五十年後、プロテスタントのカルヴァン派の創始者、ジュネーブのジャン・カルヴァンと、カトリックのイエズス会の創始者、イグナチウス・ロヨラが、奇しくも同時に採用し、カルヴァン派の牧師とイエズス会の修道士に行わせた手法である。この二つの会派が、いずれも1536年創立のわずか三十年後に、前者がプロテスタントのヨーロッパ北部、後者がカトリックのヨーロッパ南部で支配的な存在に成長したのは、この手法によるところが大きかった。

 いずれも膨大な規模に育っていった。したがって、カルヴァン派の牧師にせよ、イエズス会の修道士にせよ、ほとんどは普通の人たちだった。しかもその多くは、全く孤立してはいないまでも、それぞれが独立して働いていた。

 当初は、迫害を避けて地下に潜ることもあった。だが脱落したものはほとんどいなかった。活動の結果を当初の期待にフィードバックすることが、彼らの意思を堅固にした。活動の成果と自らの成長に焦点を合わせることを可能にした。)



 この手法を実行するならば、二、三年の短期間に、『自らの強みが何であるか』が明らかになる

 自分自身について知りうることのうち、この強みこそ最も重要である。しかも自分が行っていることや、行っていないことのうち、自らの強みを発揮するうえで邪魔になっていることまで明らかになる。もちろん得意でないことも明らかになる。全く強みのないこと、できないことも明らかになる。



フィードバック分析から分かること

 このフィードバック分析からは、いくつかの行うべきことも明らかになる。

 第一は、こうして明らかになった強みに集中することである。成果を生み出すものに強みを集中することである。


 第二は、その強みをさらに伸ばすことである。フィードバック分析は、伸ばすべき技能や新たに身につけるべき知識を明らかにする。更新すべき技能や知識を教える。逆に自らの技能や知識の欠陥を教える。無能ではないという程度の技能や知識ならば、よほどのものでないかぎり、誰でも手に入れることが出来る。



  (数学者になるためには才能が必要である。だが、三角法は誰でも学べる。外国語も、誰でも学べる。歴史、経済学、化学についても、同じことがいえる。)



 第三は、とくに重要なこととして、無知の元凶ともいうべき知的な傲慢を正すことである。多くの人たち、とくに一芸に秀でた人たちが、他の分野を馬鹿にする。他の知識などなくとも十分だと思っている。

 ところが、フィードバック分析は、仕事の失敗が、しばしば知っているべきことを知らなかったためであったり、専門以外の知識を軽視していたためであったことを明らかにする。



  (一流の技術者というものは、人間について、むしろ何も知らないことを自慢したがるところがある。彼らの目から見れば、人間はあまりにも不合理な存在である。同じように、会計士も、人間を知る必要はないと考えがちである。逆に、人事の人間は、会計や定量的な手法を知らないことを鼻にかける。

  海外拠点の責任者となったものは、経営に優れてさえいれば、活動の舞台となった国の歴史、伝統、文化、芸術を学ぶ必要はないと考える。まさにそのために、せっかくの経営能力をもってしても、いかなる成果もあげられない。)



 したがって、知的な傲慢を改め、自らの強みを十分に発揮するうえで必要な技能と知識を身につけていかなければならない。


 第四は、自らの悪癖を改めることである。自らが行っていること、あるいは行っていないことのうち、仕事ぶりを改善し成果を上げるうえで邪魔になっていることを改めなければならない。そのいずれもが、フィードバック分析で明らかになっているはずだからである。



  (たとえば、せっかくの企画が失敗したのは、十分にフォローしなかったためであることが明らかになる。優れた企画ならば、山をも動かすと思っていたに違いない。だが、山を動かすのはブルドーザーである。企画は、そのブルドーザーをどこで動かすべきかを示すだけである。ところが、優れた企画担当者というものは、企画が出来上がった段階で働くことを止める。

 本当の仕事はそれからである。実行してくれる人たちを探し、説明し、詳細を教え、必要に応じて企画を変更し、やがていつあきらめるべきかさえ決めなければならない。)



第五は、人への対し方の悪さによって、みすみす成果をあげられなくすることをやめることである。頭の良い人たち、とくに若い人たちは、人への対し方が潤滑油であることを知らないことが多い。



  (物体が接して動けば摩擦を生じることは、自然の法則である。二人の人間が接して動いても、摩擦が生じる。その時、人への対し方が摩擦を減らす潤滑油の役割を果たす。「お願いします」や「ありがとう」の言葉を口にすること、名前や誕生日を覚えていること、家族について尋ねることなど簡単なことである。もし素晴らしい仕事が、人の協力を必要とした段階で常に失敗するようであれば、一つの原因として、人への対し方、すなわち礼儀に欠けるところがあるのかもしれない。)



第六は、行ってはならないことは行わないことである。フィードバック分析によれば、行ってはならないことが明らかになる。必要な能力が欠落しているためである。人には、苦手なものはいくつもある。超一流の技能や知識を持つ者は少ない。しかも人には、並みの才能さえもちえない分野がたくさんある。そのような分野では仕事を引き受けてはならない。


第七は、並みの分野での能力の向上に無駄な時間を使うことをやめることである強みに集中すべきである。無能を並みの水準にするためには、一流を超一流にするよりも、はるかに多くのエネルギーを必要とする。

 しかるに、あまりに多くの人たち、組織、そして学校の先生方が、無能を並にすることに懸命になりすぎている。資源にしても時間にしても、強みをもとにスターを生むために使わなければならない。


  『明日を支配するもの(P・ドラッカー)』より