渋谷文化村のエッシャー展に行ってきました。
オランダの版画家で、誰もが1度は見たことのある、目の錯覚を利用した騙し絵やパターンを描いた人です。
エッシャーの公式HPで沢山絵を見ることができます。
だまし絵が有名ですけれど、植物や昆虫、風景画も繊細に多く描いています。
世界の見方が斜めで、きっと彼の人生観を表しているのだろうと思わせる作品ばかり。
個人的に池の魚と水面、そしてそれに映る木々を描いた「3つの世界」
室内の鏡から覗く街頭を描いた「鏡のある静物」
と初期の作品「妻イエッタの肖像、頭部」が心に残りました。

途中まで何気なく見ていましたが、ある版画の原画を見て気付きました。
彼は左利きだ。
版画だから左右逆で、気が付かなかった。
エッシャーが版画を制作している様子を納めたDVDを観て確信。
芸術家には左利きが多いって言うけれど彼もそのうちの1人かぁ、と変なポイントで感心してしまいました。

彼の騙し絵は並ならぬ研究の末に生み出されていることが、展示してある彼の手記のノートから分かります。
研究の在り方、とでも形容すべきもの。
ダヴィンチの手記にも度肝を抜かれましたが、エッシャーの手記にも頭が上がりません。
自分の修行の足りなさに出直そうかと思う位。
巷では「理工系の芸術家」と呼ばれているそうですが、ノートを見ればまさにそうだと頷かざるをえません。
数学の魅力をいかに面白く版画に表現するか、みたいなことを延々繰り返し考えていたのじゃないかしら、と思います。
J.S.バッハが大好きと云うのも納得。エッシャーの心にすっぽり、まるでパズルのピースのように、収まっていたんだろうな。
展示ではバッハの音楽を図式化した作品も観られます。面白いので是非。

もしこれから行く人がいらっしゃれば、ぜひ音声案内を聞きながら観て下さい。
びっくりだよ。
音声案内の機械が任天堂のDSで、タッチペンで操作しながら聞いて回れるのです。しかも無料。
美術館もあの手この手を使ってお客さんを獲得しなくちゃいけないのね、と
ちょっと複雑な感を抱きながらもわくわく回ってました。


M.C.エッシャー, Keiko Kodaka
M・C・エッシャー―グラフィック