2019年2月14日 大沢在昌「北の狩人」上下★★★★★
 
 わたしが最初に読んだ大沢作品は「風化水脈」(新宿鮫シリーズ)だった。超人的なヒーローより、登場人物の細やかな描き方に惹きつけられた。

「北の狩人」の主人公、梶 雪人(ゆきと)は少々頼りない秋田出身の警察官。父親の死の真相を探っている。新宿でエリと杏(あん)に誘われキャッチバーに連れ込まれる田舎者というのは囮捜査みたいなものだろうか。雪人は無謀なやり方で真相に近づいていくが、最後は「新陽会」新宿事務局長の宮本、偶発的にだがカタギの金貸し新島、そして新宿署の佐江刑事に助けられ命拾いする。本来なら主人公になりそうな宮本の最期が心にしみる。雪人とマタギの祖父の新宿に向ける眼差し、佐江刑事の新宿(=大海)食物連鎖論がおもしろい。無益な狩はせず雪人は秋田に帰る。また新宿に来ることはないだろうと願う。