フロプシー・モプシーとカントテール







こんばんは。
淡ね、ピーターラビットが昔から好きなの。
赤毛のアンも、秘密の花園も、イングリッシュローズの庭も魔女の娘も好きよ。


いつの頃か、そういった平和なお話が嫌いだった歳もあるけれども

小さい頃から身近にあったのはやっぱりピーターラビット。





そうね、淡がまだ自分が魔法を使えるのだと知らなかった頃
くたびれたウサギのぬいぐるみとずっと一緒にいたの。
ピエンヌちゃんよ。今でも忘れないわ。


ピムと呼んでいたそのウサギのぬいぐるみは、引っ越した時に何処かへ旅立ってしまったのだけれど

そうね、淡はウサギが好きなのかも。


長い耳は、感情を素直に表してくれる。
大きな声で鳴けない分

目は物を言うのよ。


ピムちゃんはいまでもきっと淡に見つけてもらえるのを何処かで待ってると思うの。
何処かでまたピムちゃんに会えると信じているわ。




ピーターラビットの様なブランドうさぎでなくても、淡はピムちゃんが1番好きなうさぎなの。
ピムちゃんを何度涙で濡らしたか、何度縫い目の破れたピムちゃんを泣きながらお母さんの所へ連れて行ったか、何度、ピムちゃんを抱きながら眠りについたことか。


淡の魔力が切れて死ぬまでにはそう、もう一度だけでもピムちゃんに逢いたいわ。






淡は死ぬまで貴方達の淡夢よ。


どうか忘れないで、淡夢の事を。
そして

貴方が淡夢に魅た夢の続きを

淡ったら、最近本を読まなくなったから文才も何もないわね。


絵も描かなくなったわ。

お洋服のデザイン画なら沢山描いたけれども、違うのよね。


ポーズをきめたマネキンではなく、自分の世界を描きたかったのよ。
けれども淡にはその画力もないし、ただ燻るばかり。


淡が1番重要とするのは眼差しだと思うわ。
その次に口元。

ぽてっとしたマシュマロの様な口も可愛いけれども、薄い軽薄な笑みを浮かべる口元も好きなの。
淡自身はどちらかと言えば後者の方で

身長さえ気にしなければ男装の方が似合う顔立ちだと思うわ。



誰かと戯れる時ではない、ただ独りで思いにふける瞬間垣間見えるその眼差しが
個人の感情を色濃く魅せてくれるの。




憂いを帯びた貴方の瞳が宙に描くのはそう、まるで私の見た夢の世界。


雨に濡れた春風が、桜を散らして髪に纏わりつく。貴方はまるで初めからそこにいたかの様にけれども忽然と、私の視界に佇んでいました。
極端に整った血の気のない人形の様な顔立ちのその人が瞬きすらしていない事に気付いたのは、その瞳に宿る冷たい色にすっかり魅入られてしまった後で
風と共に何処からか流れるチェロの音色が唐突に大きく、耳鳴りの如く鼓膜を揺らし、私の心臓が激しく脈打ち不安を駆り立てる。
声を出す事を忘れてしまった喉は引き攣るように渇き、風の音すら聞こえなくなった。
五感全てが彼を捉え世界を染めて行く。
永遠の様に感じたその瞬間、貴方の手がそっとこちらに差し伸べられる