今回は椎葉村キュウリの

話の続きです

ちなみに前回の話はこちら






 今回は私の失敗談について解説します

これを元に椎葉村キュウリ(華南キュウリ)の特徴が分かってきますのでどうぞ最後までお付き合い下さい


今回もよろしくお願いします



まず初めに
キュウリ栽培で重要な点として、ツルをどう扱うかが問題ですが、

椎葉村キュウリを栽培する上で

最も注意が必要なのが摘芯の考え方です。




一般的なキュウリ栽培では摘芯が推奨されますが、



椎葉村キュウリのような枝成り性(飛び成り性)の品種は

摘芯の位置やタイミングを誤ると、ほとんど収穫できずに終わる可能性がある




まず違いを区別する為に、一般的に知られている華北系の改良キュウリ(節成り、早生型)の場合ですが、


主茎の各節に雌花がつきやすい
春〜初夏にかけて集中的に収穫する
草丈が人の身長を超えたあたりで主茎を摘芯
摘芯後は草勢が弱まり、真夏前後で終了する

いわゆる早取りの春型キュウリです


このタイプでは、
子ツルは2節程度で早めに摘芯し、

主茎主体で収穫を終わらせる栽培が一般的です。




一方


「華南キュウリの摘芯」 ―


椎葉村キュウリを含む古代華南系(枝成り・晩生型)は、


改良キュウリの考え方がそのまま当てはまりません



椎葉村キュウリでは、
主茎が7〜8節程度に達した段階

(人の身長よりやや低い位置で)


主茎を摘芯します。

ここからがスタート地点です。


その後に伸びてくる子ツルと孫ツルを切らず、大切に伸ばすことで、ようやく本格的な着果が始まります。
この品種は、
子ツルと孫ツルに実をつけることで力を発揮する、
晩生の夏型キュウリです。

よくある失敗例


華南系キュウリを

一般的なキュウリと同じ感覚で扱ってしまうと、


主茎を高く伸ばしてから摘芯する、子ツルを早めに切ってしまうといった管理になりがちです


その結果、
実がつくはずの枝をすべて落としてしまい、
草だけが茂って収穫できないという事態になります。

椎葉村キュウリは早く取るキュウリではなく枝を伸ばし時間をかけて実らせるタイプのキュウリです。
初夏に収穫が少なくても焦らず、
夏本番に向けて
子ツル・孫ツルを信じて待つことが、

最大のコツだと思います。



※ちなみにネット上では華南キュウリを「春採り型」(節成り)と説明する例がありますが、

これは場込系・改良系の華南キュウリのみを指した説明です。

非常にややこしい事ですが、私が栽培しているような古層の華南キュウリは、

むしろ春先の生育が遅く、夏以降に環境が整ってから本来の生育を始める夏型です。





次に育苗の注意すべき点をお話します

まず

①水やりの量とタイミングの難しさです、


現代のキュウリ栽培では、
発芽後はこまめに水を与える
乾かさないよう管理する
といった方法が一般的に紹介されます。

しかし椎葉村キュウリでは、
これをそのまま当てはめると、
根が伸びきる前に傷んで、生育が途中で止まるといった状態になりやすく、

水の与えすぎ・与えどきのズレが致命的になります。
成長が遅いからといって水や液肥を与えると逆に苗の成長を阻害する可能性があるのです。

※ちなみにこの画像のように葉がくるんと内側にカールしてくる症状が出てきた場合は水不足ではなく逆に多湿で寒く凍えている症状です。




次に
②用土です。
私は病気を恐れるあまり、
赤土などの無菌に近い清潔な培養土
を使っていましたが、
結果はあまり良くありませんでした。

それよりも、
赤土は必要ですが、腐葉土やピートモスなどの有機物豊富で菌の多い土
を使った方が、
明らかに根の張りと生育が良かったのです。

でもだからといってほぼヤシガラなどの有機物が多い市販品の育苗培養土では軽すぎて根が強くならないし、逆に赤土や黒土などの土が多いと水で泥になって固まりだめ、
※土については難しいし説明が長くなるのでまた別の機会に説明します。



そして
③光を「当てなかった」ことによる失敗
当初、私は
「発芽直後に強い光に当てると葉焼けするのではないか」
という不安から、光への曝露を控えめにしていました。
しかしその結果、
明らかな日照不足
茎ばかりが伸びる徒長
軟弱な苗
になってしまいました。

※ちなみにキュウリの苗を作る時期はまだ寒い3月下旬から4月に行うため、温床による室内栽培になるため
温度ばかり気にして、光を考える事を忘れがちにもなるので

キュウリは、
発芽したら早めに、しっかり光に当てることが重要です。

光を出し惜しみしない。
これが分かってから、苗の質が大きく変わりました




そして苗が成長した後、
特に梅雨時期の問題点を説明します
梅雨時期には、
ヨトウムシが子ツルの成長点に繭を作り、集中的に食害する事態も多々あります。

特に成長点を失うと、
そのツル自体が事実上終わってしまうため、
在来系の華南キュウリでは致命的です。

私は無農薬栽培に強いこだわりがあり、
薬は使わず、
木酢酢や唐辛子スプレーも
葉の呼吸を阻害する可能性を懸念して、一切防除しませんでした
実際に華南キュウリは
葉の反応が敏感で、
防除資材によるストレスが生育に影響しやすい印象があります。

ただし梅雨時期においては、
無農薬=放置では決して成り立たず、
むしろ人の手による介入が不可欠でした。

※ちなみに無農薬を否定する意図は全くありません
むしろあえて無農薬でやりたい派です。

※無農薬や自然農法についても凄く誤解と説明の難しさを絡む複雑な分野なので、これも詳しく偏見のないよう科学的に後々別で説明します。

でもちなみに「無農薬は放任栽培」ではありません
大事な数日間は成長点や葉の裏など観察し、根気強く幼虫を手で潰して
毎日キュウリに愛を注ぐ時間と覚悟が必要である事、それは勘違いしてほしくない所であります。




最後にこの椎葉村キュウリは希少な在来キュウリの為、
タネとり採りをして種を翌年に繋ぐ事が重要事項であります。

しかしここにも注意をすべきポイントがありますのでお聞き下さい。



この完熟果の写真ですが、
実は見た目に反して実は未熟果です。


果皮が黄色くなり収穫適期と初めの頃の私は判断してしまいましたが、
茎との切断面がまだ青く、
本来はもう一段階、赤茶色になる必要がありました。


実は収穫直前の天気が
気温と直射日光が非常に強く、
完熟前にもかかわらず日焼けによって表面色だけが先行してしまっていただけだったのです。
中身は未熟なのに、
外見だけが「完熟風」になっていた
状態でした。




採種・洗浄・乾燥まで行いましたが、
種子は薄く、ペラペラしている、張りが弱い

でも私は在来キュウリのタネはこういうものだろうと
問題だとは思いもしませんでした、


ですが案の定、翌年そのタネを蒔いた所、全く全て発芽しなかった。

この時点でようやく、
タネが未熟だった、完熟を待ちきれなかった、見た目だけで判断してしまった
ということに、はっきり気づきました。


この経験から強く感じたのは、
在来作物ほど、
見た目より「内部の成熟」を重視すべき
ということです。
現代の改良品種は、
見た目と内部成熟が揃いやすい
多少早どりでも発芽力が残る
一方で、
椎葉村キュウリのような在来系統は、
見た目に惑わされやすく
完熟前に採ると致命的
タネの出来がすべてを左右する
という、非常に正直な作物でした。


※ちなみにタネ採りの為に人工授粉は必要だと採種の参考書等には書かれていますが、
実際は人工授分はあまり必要なく、逆に人工授分をしようとすると花が傷つき不稔になる場合もあり、意外と放任でも受粉はちゃんとされます。

※そして、追熟ではタネが充実しません
茎がしっかりと木に繋がった状態で生きた栄養が流れないとタネは成長しないので、必ず完熟させてから切り離して下さい、
追熟の必要性はタネの周りの綿をタネと分離しやすくする為だけのものです。






 おわりに
椎葉村キュウリの栽培は、
正直に言って簡単なものではありませんでした。
何年も収穫に失敗し、
本やネットの情報通りにやってもうまくいかず、
ようやくその性質を理解できたのはごく最近のことです。
しかし今振り返ると、
その「失敗の多さ」こそが、


このキュウリが
現代的な早取り・節成り品種とは異なる
古層の華南系キュウリであることを物語っていたように思います。


在来作物は、
タネだけを見ても分からない部分が多く、
実際に育て、迷い、失敗する中で少しずつ性質が見えてきます。



今回の記録が、
華南系在来キュウリについての
数少ない一次情報のひとつとして、
どこかで誰かの参考になれば幸いです。