静かなる風の囁き、
薄紅の花びら舞い散る午後。
誰も知らぬ山奥に、
時を忘れた祠あり。

光と影が交わる場所、
月は昼にも微笑みて、
現か幻か判らぬまま、
鈴の音ひとつ、耳を打つ。

足音もなく、
羽音もなく、
ただ香るのは八月の夢。

水面に揺れるは、
過ぎし日々の面影か。
触れれば消えるその輪郭に、
心ひかれし者ひとり。

この世とあの世の狭間にて、
名もなき詩が生まれけり。
語られぬまま、風と共に、
永遠に彷徨う幻想の歌。