感情のない 言の葉が
その報を 音もなく告げた
旅先から帰る途中だった僕は
よくわからずに 空を見上げた
だからって 何が見えるのか
何も見つかりはしないけど
あの日 あの場所で
「ありがとう」 って
「幸せにならなんよ」 って
両手で 握り締めてくれた
数日前に 電話で話をしていた
なのに どうして?
さよなら 心清き人
さよなら 純粋なあなた
変わらず 送り続けるサイン
もっともっと
あなたから 学びを請いたかった
もっともっと
あなたと 時を肴に語りたかった
あのグラスは 今も
転ぶことなく きっと揺れている
もう帰ることのない
それでも 心の師だった人
決して みじめでもなく
弱くもなかったんだよ
ただ誰よりも はるかに純粋だっただけ
七輪の中の炭火が 静かに消える
寒さが嫌いだったのは 僕もです
残された歳月は あまりにも
短すぎた
その駆け足には
追いつけなかったんだ
永久に続く 新しい旅へ出て
夢の中でも 逢うことができたのなら
六十年の傷を そっと見せて
どんな地図にも載っていない港に
たどり着いたのなら
こっそりと 僕だけに教えて
あなたは静かに 人生を語っていた
そう心の中で もがきながら
最後まで 泣かないつもりだったけど・・・
もう届くことのない この詩を
夜空に向かって 謳いたい
さよなら 心清き人
ずっとずっと 純粋な人