「でもね」

佐藤さんは続けます。

「景色を見たら、少しでも気分転換になるかなって思って、だから来てもらった」


わたしは思わず笑ってしまいました。

「すごく気分転換になったよ、本当に」

そう言うと、佐藤さんも笑います。

「じゃあ作戦成功だ」

二人で顔を見合わせて笑いました。

その時でした。


佐藤さんが少し真面目な顔になります。

「ななさん、子どものことは、俺も簡単に『大丈夫』なんて言えない、きっと不安になる日もあると思う、落ち込む日もあると思う」

わたしは静かに頷きました。


「でもそのたびに一人で抱え込まないで、嬉しいことは二倍にして、つらいことは半分ずつ背負っていこう、俺は、そのために隣にいたい」

その言葉を聞いた瞬間、わたしの目から涙がこぼれました。

昨日みたいな苦しい涙じゃありません。

温かい涙でした。


「どうした」

佐藤さんが少し慌てます。

わたしは涙をぬぐいながら笑いました。

「ごめんなさい、嬉しくて、こんなこと言われたの、初めてだったから」


佐藤さんは照れくさそうに笑いながら

「泣かせるつもりじゃなかったんだけどな」

と言いました。


夜景は変わらず目の前で輝いています。

あの日、ディナークルーズの帰りに見た景色。

その時よりも今日の方が、ずっと綺麗に見えました。


きっと景色が変わったんじゃない。

わたしの心が少しだけ変わったんだ。


そう思えた夜でした。


次回へ続きます。