そして、山本さん一家との食事会当日。
以前、ベビー用品店で偶然会った佐藤さんと同じ職場で働いている人、山本さんです。
誘っていただいてから、この日を楽しみにしていました。
待ち合わせの時間より少し早く家を出て、佐藤さんと待ち合わせ場所で合流します。
「今日はよろしくね」
佐藤さんはそう言って、わたしの顔を見ながら優しく笑いました。
二人でお店まで歩き始めると、佐藤さんがふとわたしの顔をのぞき込みます。
「ななさん、緊張してる?」
図星でした。
「えっ、分かる?」
思わず笑ってしまうと
「分かるよ。ちょっと表情が硬いもん」
そう言ってクスッと笑います。
「だって、佐藤さんの職場の人とご飯なんて、やっぱり緊張するよ」
正直な気持ちを話すと、佐藤さんは歩きながら優しく言ってくれました。
「大丈夫だよ、山本さんも旦那さんも本当にいい人だから、この前ベビー用品店で会った時も、すごく話しやすかったでしょ?」
「うん、それはそうなんだけど…」
「今日は気を遣わなくていいから
いつものななさんでいてくれたら、それで十分」
その一言で、不思議なくらい肩の力が抜けました。
「ありがとう」
そう言うと、佐藤さんは照れくさそうに笑いながら
「緊張してるななさんも可愛いけどね」
なんてさらっと言うんです。
「もう、そういうこと普通に言うよね」
少し恥ずかしくなって笑うと
「思ったこと言っただけ」
と、何でもないことのように返してきました。
そんなやり取りをしているうちに、さっきまでの緊張は少しずつほぐれていきます。
佐藤さんと一緒なら大丈夫。
そんな安心感に包まれながら、お店へ向かいました。
店内へ入ると
「ななさん!」
聞き覚えのある明るい声が聞こえます。
山本さんが笑顔で大きく手を振っていました。
次回へ続きます。
