おこがましかった

子供が病気になって、私は母や姉に　自分の苦しさや悲しさを泣きながら話した。

私の気持ちに寄り添ってくれてありがたかった一方、私の為に何かしたい母は、私の気持ちよりも自分がしてあげたい事にいっぱいで、あれこれ口を出すようになった。

子供の事でただでさえしんどい私は、母のその距離感がとても重くなった。

姉は、いつでも私の話を聞いてくれた。

私の欲しい答えをくれるときもあれば、「え、それはそうじゃない、違うんだよ」と思うことも増え、気持を分かってくれない姉にもやもやすることもあった。

そして、姉の子供と自分の子供を勝手に比べてしまっている自分がいた。

私は母や姉からも心を閉ざしてしまうようになった。

仲の良かった友人には、いっさい子供の病名は伝えていない。もちろん、私の耳に入らないところで噂は立っていると思う。

興味本位で聞いてくる人もいた。

サッカーなんてもうできるわけ無いのに、「まだボール蹴ってるんでしょう？」とわかってるのに聞いてくる嫌な人もいた。

本当に優しい人は、なんとなく状況わかってるけど、根掘り葉掘り聞かず　そっと見守ってくれた。

でも私は、極力人に会わないようにし、学校などのイベントも知り合いを避けて一人で参加していた。知り合いがいても、声をかけられないように避けていた。

とにかく逃げ回っていた。今も。自分を守るために。

母も姉も悪くない。

友人も悪くない。

完全に私の気持を分かってほしいだなんて、無理な話。分かってくれようとしてくれるだけでも有り難いのに。

変わったのは私。

私の世界だけが、子供の病気によって変わってしまった。

以前の世界に戻れることはなく、ずっとこの世界にいる。

最近思うことがある。

逃げ回っていて良かったのかな。

あのときは、こんなに長期戦になると思わなかったから。

あのとき、周りに全部話して、子供の友達にも話していれば、うちの子はもっと楽だったんじゃないかな。

度重なる入院や手術にも、みんなからパワーをもらってすごく前向きに頑張れたんじゃないかな。

私は、子供をたった一人で頑張らせてしまって居たんじゃないかな。

私ひとりでも子供を支えてみせる　だなんてなんておこがましかったんだろう。

自分を守るのに精一杯で、子供のことを守れて居ないんだろうな。