【かぬれ君にいてみた：コロッケ蕎麦】

　休日の午後の遅い朝ご飯を食べ、暖かい日差しの中、まったりとしていると、へそ天で寝ていたかぬれ君が、起きてきて、滅茶苦茶かわいい、笑顔を振りまきながら、抱っこをせがんできます。

　抱きかかえて、おなかをさすっていると、いつもは、塩対応なかぬれ君も、今日は、機嫌が良いのか、目をつぶりながら満足そうにまったりとしています。

　そうそう、かぬれ君！

　駅そばスタンドには、コロッケ蕎麦なる謎のチープな、おそばが存在し、無性に食べたくなる時があるけど、知ってる？

　人間は、本当に変なものを、発明する種族だと、つくづく思う時があるが、コロッケそばなんて、チープ物を考え付くとは、あきれる時があるよ！

　今日は、謎のコロッケ蕎麦なるものについて、ご主人に教えてあげるから、「モンデールのシュークリームを所望する」と、偉そうな口調で語り始めました。

　暖かいかけそばに、冷凍コロッケがトッピングされているだけの、実にシンプルな蕎麦で、主に駅そばスタンドなどで、提供される、日本でしか食べられない、この謎のメニューが、いったい誰がどの様な経緯で世の中に誕生し、浸透していったのか？

　コロッケそばの起源は諸説ある様で、明治時代にはすでに存在し、当時はポテトコロッケでなく「鶏肉のつくねの素揚げ（揚げしんじょう）を乗せた、おそばをコロッケ蕎麦と称していたようです。（当時のコロッケは、高級料理でした）

現在も銀座で「そば所よし田」で、当時のコロッケそばを食べることが出来ますので、休日や近くに寄った折にでも、立ち寄り「元祖、コロッケ蕎麦」を食べてみてください。

　皆さんご存知の、ポテトコロッケの蕎麦は、1965年（昭和40年）創業の「箱根そば」が、遅くとも1972年（昭和47年）の下北沢店オープン時から提供し、関東で普及するきっかけとなり、「箱根そば」では、現在も伝統的にカレー味のポテトコロッケを用いています。

　大阪・新梅田食道街にある「潮屋梅田店」も、1969年（昭和44年）の創業以来、カレー味で提供しおります。（ジャガイモには、カレー味が鉄板なのかもしれませんね♪）

　「箱根そば」や「潮屋梅田店」が提供を開始した時期は、高度経済成長期の末期にあたり、冷凍技術が浸透し、屋台そばが、駅そばスタンドに置き換わり、洋食の一般化が進んだ時期も相まって、一般に普及していったのも理由の一つかもしれませんね。

　しかし関西ではコロッケそば自体が関東の様に普及しなかったようです。

　理由としては、関西では、蕎麦よりも、うどん文化が主流だった為、主流のだし汁がコロッケとは、相性が合わなかった事と、揚げ物には、ソースという文化の違いが、関東の様に広く普及には、至らなかったと予想さ、おそばには、濃い口醤油の、真っ黒い麺つゆが合うようですね。

　「名代富士そば」もコロッケそばを提供しており、2021年には「東京名物コロッケそばを広めようの会」という広報企画を立ち上げており、海外からやって来る、観光客もこの、謎多き、コロッケ蕎麦に、チャレンジし、SNSなどで、日本でしか食べる事の出来ない、コロッケ蕎麦を世界中に配信してくれています。

　コロッケ蕎麦には、明確な定義や調理法は決まっておらず、そばは温かいかけそば、コロッケはポテトコロッケ（冷凍）を用いるのが一般的です。（ポテトコロッケでない場合や「冷やしコロッケそば」「コロッケうどん」も存在致しますが、邪道です！）

　食べ方も有名ラーメン店の様な、厳格なルールは無く、汁が染みたコロッケを崩さない派、崩してポタージュのようにする派、半分は崩さず半分は崩す派、別皿に移して食べる派と個人の自由に任されております。（食べきれずに、残しても怒られません！）

　コロッケ蕎麦は、提供する店側にも利点があり、コロッケは冷凍食品として広く普及している事や、コロッケは天ぷらなど他の揚げ物に比べ、作り置きしても味が落ちにくい事と、精肉店がコロッケをラードで揚げるのに対し、そば屋は植物油で揚げており、そばに合うさっぱりしたコロッケになるのも、導入される理由の一つでしょう。

　この様な、日本独自で発達した、食事（B級グルメ）が、世界中の人に、愛されるようになり、近い将来、国賓などを招待する、晩餐会などでも、提供される日が来るかもしれないと、考えていると、かぬれ君は、話疲れたのか、私の腕の中で、気持ちよさそうに、すやすや寝ており、知らない内に、私も眠りに落ちし、暖かい日差しの中、まったりとした休日の午後が過ぎてゆくのでした。

#わたしの推し麺【かぬれ君にいてみた：コロッケ蕎麦】