【柔道部物語：１年生！】

　当時我々、格闘技系の運動部（柔道・空手・剣道・相撲・ボクシング・レスリング）は、武道棟の校舎裏にある体育寮（鉄筋５階建）で寮生活をしておりました。

　武道棟には、各部の道場が併設されており、稽古時間以外でも自由に利用できる環境ですが、

厳しすぎる稽古の後に利用する者は、ほとんどいませんでした。

　私の同級生は、都内４名・福島県２名・滋賀県１名・北海道１名・付属校３名と私を含む１２名が今年の1年生として入学致しました。

　当時の柔道部は、体育寮の１階と２階の１部を含め、１２部屋使用していたので、新入生は、各部屋１名ずつ割り当てられ、先輩と寝食を共にします。（各３人部屋）

　新入生の集合時期は、春休み中の為、校内合宿が行われておりましたので、稽古は、午前・夕方の２回あり、夕方の稽古後は、浴室と食堂にて交代で上級生の世話や各部屋の掃除、先輩の道着や衣類の洗濯など山のような雑用の他、日替わりで、各部の１年生が食堂で、ご飯盛り当番もありました。

　食堂では、常に１年生２名（交代）が待機して、部の上級生（３・４年生）が来て席に着くと、お盆に乗せた食事を持っていき、もう一人がお茶を入れて持っていきます。

　お茶といっても、出がらしではなく、食堂にある大きなヤカン（4ℓ）に茶葉と熱湯をいれて、上澄みがなくなり、きれいなお茶になるまで流し、きれいなお茶を湯呑に注いで持っていきます。

　お風呂当番は、30分交代で、1年生が待機して、部の上級生（３・４年生）がお風呂に来た時に、背中を流します。（稽古終了から21：00頃迄交代で待機します）

　先輩係以外の1年生は、部屋の掃除や先輩の洗濯（道着や私服）を行い、交代で雑務や食事をし、時間を見て食事等をして、ゆっくりした時間を過ごすことなく、奴隷の様に、忙しく雑務をこなしてゆきます。（江戸時代の丁稚奉公みたいですね）

　入学式までは、研修中なので新２年生と一緒に行いますが、1年生になるとサポートは、無くなります。

　22時には、点呼があり、主将部屋の1年生が廊下で、「点呼～！」と大声で号令をかけると、全員廊下に集合し、各部屋の状況を大声で伝えた後、主将やマネージャーから翌日の予定や事務連絡を受けた後、一応消灯となります。（まるで少年院の様です）

　しかし、体力の有り余っている大学の運動部なので、おとなしく消灯などする者はなく、

点呼後に各部屋での酒盛りや、３・４年生の夜食の買い出しと雑務は、エンドレスに続き、終わることはありません。

　部屋での飲み会などは、深夜まで続き、コンビニなどなかったので、深夜に酒屋の裏口に行き、就寝している店主をたたき起こして、お酒やおつまみを購入に走ります。

　夜食の買い出しも深夜まで営業している、ラーメン屋さんやおにぎり屋さんの持ち帰りのメニューを買いに行く事も頻繁にあります。

　朝６：００に主将部屋の１年生が起床の号令を発し、６：１５から朝トレが始まり、全員でランニング・うさぎ跳び・ダッシュの早抜けなど朝トレの後、寮に帰り朝食となりますが、1年生は、食堂で上級生の給仕係や寮の玄関と廊下やトイレの掃除などの雑用後、朝食を摂り1・2年生は、八王子の校舎へ行きますが、手際よく行わないと、食事をとる時間も無くなってしまいます。

　１年生の重要な雑務の中に、電話当番があります。（休日は、１年生３名が寮当番です）

廊下の真ん中に赤い公住電話が設置されており、電話がかかってきたら３回以内に取らねばならない厳しいルールがあり、電話が鳴る度に、「押～忍‼」と叫びながら、1年生が廊下をダッシュしておりました。

　電話を取り次ぐ時も、部屋の入り口で腰を下ろして上級生に話しかけ、不在の場合は、便箋に伝言（書式が決まっている）を記入して部屋に届けます。

　当時の柔道部には、１年生が３・４年生と会話するときは、必ず腰を下ろし、立った状態で上級生に話しかけては、いけないという、厳しいルールがありました。（自分たちが上級生の頃には、廃止しました）

　上級生３・４年生の近くに1年生がいない場合に用事がある時は「お～い！1年！」と大声で声がすると、「押～忍‼」と叫びながら、どこにいても１年生がダッシュで駆け付けます。

　就寝時に布団をひく時、上級生の布団に重なる場合には、上級生の布団を上に重ね、布団を踏まなければならない時には、先輩の布団をめくり踏むことは、禁止されておりました。

　寝るときも、上級生が横になり、電気を消すように言われるまで、下級生は、横になれないので、早く横になってほしいと常に願っておりました。

　今思い返しても、よく体力と気力が持ったものだと、自分を褒めてあげたいと思います。

　この様な生活をしていた為か、社会に出ても学生の頃よりは、天国の様に感じられ、卒業して４０年程過ぎましたが、学生時代程の人権無視の理不尽な暴力にあうこともなく、楽勝で毎日楽しく暮らしております。

　少し長くなりましたので、悲惨で大変な人権無視の１年生生活は、この辺で一旦、終了しますが、昭和末期の柔道部物語は、まだまだ続きますので、お時間のある時にでも、暇つぶしに覗きに来てくださいね♪

#学生時代の部活動【柔道部物語：１年生！】