1.異様に長期間安定的で温暖な後氷期~現世の気候

  • 約7万年前からはじまったウルム最終氷期氷期は、約1万1700年前に終了し、その後の現在にまで至る後氷期に入った。
  • ↓図、グリーンランドの氷床ボーリング資料から得られた地球寒暖のサイクルを見ると、ウルム氷期には全般的に寒冷な中にもスパイク状の短いサイクルで頻繁に温暖へと変化していることが観察される。それに対して、その後の後氷期には、温暖で非常に安定的な気候状況が異様に長期にわたって続いていることが見て取れる。

 

  • 後氷期のはじまりは、1万1700年前で、縄文早期のはじまりと一致する(↓図)。 最終氷期間の縄文草創期の土器型式と比して草創期以降の土器型式は、短い期間で多様で特徴的な土器型式が次々と誕生している。 これより、縄文早期(後氷期)にはいって縄文人の活動が活発化していったと推察される。

 

 

 

2. 地球の寒冷・温暖サイクルとミランコビッチ・サイクル

  • 地球の寒冷・温暖化のペースメーカーは、ミランコビッチサイクル(地球の公転軌道、歳差運動、地軸傾度の周期的な変化)。
ミルティン・ミランコビッチ(1879-1958)、セルビアの地球物理学者。セルビアの2000ディナール紙幣に肖像が使用。
 
 
 
  • ↓図から、10万年周期の地球の公転軌道(離心率)の変化と地球の寒暖サイクルとがよく一致していることが分かる。

 

 

 

 

  • また、メタン濃度の増減と歳差運動(2万5800年周期)の一致がみられる。

 

 

 

  • 上述ミランコビッチサイクルと地球寒暖サイクルの一致から現在および将来を予測すると『地球は寒冷化に向かっている(↓グラフ赤線 Natural Trend)』ハズ。 しかし、実際にはグリーンハウスガスであるCO2とメタンは、それぞれ8,000年前と5,000年前以降、明確に増加の傾向にある。

 

 

 

  • ↑グラフのミランコビッチサイクルから予想される地球寒冷化トレンドからCO2濃度が外れ、上昇しはじめるのは約8,000年前。また、メタンが上昇しはじめるのが約5,000年前。 この8,000年前と5,000年前の変革点を↓図人類の社会活動の観点から眺めると、ちょうど農耕社会の黎明期と一致する。

 

 

 

 

3. 後氷期の安定的で温暖な気候と人類の農耕活動

  • バージニア大学のラジマン(William F. Ruddiman, 2005)は、『我々人類の祖先が行った農耕活動が石炭を燃焼し車を運転しはじめる数千年も前から地球温暖化をスタートさせていた(A bold new hypothesis suggests that our ancestors’ farming practices kicked off global warming thousands of years before we started burning coal and driving cars)』と大胆な仮説を提唱している。
  • 『現在の地球の安定した温暖期は、8,000年~5,000年前からの人類による農耕活動の結果排出されたCO2・メタンガスがミランコビッチサイクルに起因する寒冷化に向かうトレンドにOn topで付加された結果である』と考察している。

 

 

 

  • 内燃機関を使った産業革命以前の過去の人類の活動が、果たして地球規模のCO2濃度に影響を与えられるものなのか?; ↓グラフは、南極大陸の氷床ボーリングから得られた資料をもとに、紀元前7世紀から現在までのCO2濃度を解析したもの。 全体には上昇のトレンドとなっているがスパイク状に数回のCO2濃度の降下が認められる。今までは、これらのイレギュラーな変動は、火山噴火等の自然災害に起因したものとして片付けられていたが、ペスト@欧州および天然痘@アメリカ大陸でのパンデミックにより多くの死者が出された結果、人類の活動が後退したためCO2濃度のそれに応じて降下したとも解釈できる。この解釈が正しいとするならば、先史人類の活動も、産業革命時と同様に地球規模の環境変化に影響を与えることが出来ていたと言える。

 

 

地球温暖化と農耕 2/2; 縄文農耕論に続く