98 五領ケ台1式(静岡県長井崎遺跡)高18.2cm. 器台のように見える筒形の下胴部をもつ深鉢。文様は4単位の構成で細線文、三角印刻文・三又文など五領ケ台1式の要素をすべて備えている。胴部にはRLの縄文が部分的に施文される。下胴部に等間隔につけられた無文部がえぐられており、特異な底面形をしている。

同上(五領ケ台式土器の編年/今村)

 

  • 1936年、山内清男により設定された型式。
  • 江波(1948)により調査資料が基準資料として扱われてきた。これによると、①半載竹管文の施文分具を多用し、②平行線文・弧線文・波状文などの文様を構成するものを主な文様特徴とし、③さらにこれらの文様に交互刺突文や連続爪形文の施された隆線文などをメルクマールとして全体を構成するものとした。
  • 1968年、神奈川県宮の原貝塚で五領ケ台式土器を包含する貝層が調査され、貝層および貝層上から出土した五領ケ台式土器に時間的推移を認めて、1・2式の2細分が提唱された(今村1974)。

 

 

五領ケ台1式;

  1. 細線文三角印刻文が文様の基調
  2. 胴部には従位の帯縄文が施文される一群と、 半裁竹管による集合沈線文を特徴とする一群の土器。
  3. 胴部の縦の縄文は、S字状結節で施される五領ヶ台式特有のもの。
 
 

69 五領ケ台1式 深鉢 (神奈川県宮の原遺跡)高29.7cm. 口縁に4個の扇状把手をもち、胴部上半がふくらむ優美な器形。頸部は無文帯となり橋状把手がつく。文様帯の区画は半載竹管でなされ、細線文や三角印刻文で加飾している。胴部にみられる縦の縄文は、S字状結節を伴う五領ケ台式特有のもので五領ケ台1式の典型。

 

 

(私見)五領ケ台1式 深鉢 (茅野市鴨田遺跡/師岡平遺跡) @尖石遺跡博物館

 

 

 

103 五領ケ台1式 深鉢(静岡段間遺跡) 高17.2cm. 口縁に双頭の波状突起1個をつける。五領ヶ台1式から2式にかけての所産。縄文を地文とし集合沈線を施している。

 

 

109 五領ケ台1式 (梨久保式)深鉢 (長野梨久保遺跡)高19.0cm. 標識遺跡から出土し、復元された数少ない梨久保式土器。本型式の特徴である口縁部の縄を想像させる刻みをつけた特異な隆帯や主文様となる格子目箆切沈線文が施される。胴下半部に見られる沈線文様に中期初頭期の共通性がうかがえる。

 

 

111 五領ケ台1式 深鉢 (長野中ツ原遺跡)高29.5cm. 眺めの細い胴部がしまり、口縁と底部が開く鼓形の深鉢。平縁に対になる動物装飾らしい小突起がつけられる。頸部の隆線により、上下に区分される文様帯のうち、せまい口縁部には、細線文帯と山形連続文帯が2段にかさなり、後者に小さな橋状把手が4か所つく。胴部は縦方向の縄文地の上に、半裁竹管文による三角形区画文を4単位と、その中間に渦文と垂下する沈線文を組み合わせている。張出し底、深い刻みの山形連続沈線文や細線文など、前期末葉の要素を残すが、胴部は縄文と縦に展開する沈線文など、あきらかに中期初頭の特徴を備えている。

 

 

 

五領ケ台2式;

  1. 口縁部や胴部に施される交互に三角のえぐり込みを加えることにより作出した連続コの字文。
  2.  

68 五領ヶ台2式 深鉢 (伝神奈川五領ケ台貝塚)高31.0cm. 4個の大きな波状口縁をもち、口縁部や胴上部に連続コの字文が施される。胴部に特徴的な斜縄文。この器形は五領ヶ台式直後まで引き継がれる。

 

 

 

70 五領ヶ台2式 深鉢(神奈川細田遺跡)高38.0cm. 土坑中から口縁部をっしたにした倒立の状態で出土したもので、特殊な意図による行為の結果と考えられる。文様構成は口縁部も胴部も4単位を基調としているが、なぜか口縁部と胴部の区画がわずかにずれている。文様は「コ」の字文の他に半裁竹管による各種の沈線が組み合わせられる。底部を欠いている。

 

 

 

71 五領ケ台2式 深鉢 (長野曽利遺跡@井戸尻考古館)『四方山形口縁深鉢』曽利40号址. 2段構成の独特な口頸部と、やや反り気味の底部をもつ深鉢は、この時期の標識的器種。平行沈線を主体としたかんたんな文様構成は、素文地が目立つが、これもまた、この時期の一特徴。

 

 

107 五領ケ台2式併行 深鉢(長野原沢遺跡)高47.4cm. 口縁部の隆線による三角形区画文・同心円弧文、頸部の交互刺突による波状文、胴部へのY字状懸垂文とその空白の細かな斜縄文などが特徴と言える。原沢式の名称を与えているが定着していない。

108 五領ケ台2式 深鉢(長野唐沢遺跡)高30.0cm. この時期としては珍しい円筒形。文様も太い連続爪形文のある隆線と、平行沈線文のみの単純な構成をとる。両者とも中期初頭の主文様要素であり、文様の簡略化から梨久保式の衰退期、つまり五領ヶ台式の新しい部分の一群とのとらえられる考え方もあるが、八ケ岳山麓の九兵衛尾根式との関連も当然考慮される。まだ、明瞭な形式の内容究明には至っていない。

 

 

110 五領ケ台2式(梨久保式)(長野梨久保遺跡)高23.1cm. 口縁部の縄を想像させる刻み目のある特異な隆帯や格子目箆切沈線文、不規則な区画文などが本式の特徴とされる。

 

 

112 五領ケ台2式 深鉢(長野扇平遺跡) 復元高36.0cm. 4つの大きく開く波状口縁とスリムな円筒形胴部をもつ中期初頭に多い器形。口唇部の刻み目や口縁部の縦の沈線文、頸部に引かれる数本の沈線文と粘土紐によるつまみ状小突起、そこから垂下する沈線など、おなじ中期初頭でも梨久保式とは全く異なる文様要素。

 

 

105 五領ケ台1式(久兵衛尾根2式)浅鉢(長野久兵衛尾根遺跡)高10.2cm. 折り返し口縁部から口唇内側に斜縄文を施し、頸部は三角連続刺突文、胴部は平行沈線文による不規則な構図が描かれる。この時期に通有な浅鉢とは異なる器種で、あまり例をみない。椀とすべきかもしれない。

 

 

106 五領ケ台2式 浅鉢(静岡段間遺跡)高8.5cm.