花弁状刺突文が施された甕

 

  • 新潟県において縄文時代後期初頭に位置づけられている土器群。
  • 『新潟県を中心として東北南部から関東・中部高地、そして北陸という広い範囲での出土が知られている土器』 (田中耕作『信濃』第3次第 37 巻第4号 1985)

 

 

縄文土器のAMS14C年代と較正年代 一石川県の縄文前期~晩期を中心にー (小田寛貴・山本直人)

 

 

  • その大きな特徴は、甕形土器胴部に施された各種の刺突文とそれに見合う蓋形土器。

花弁状刺突文が施された蓋型土器

 

 

 

横壁中村遺跡@群馬県長野原町(やんば天明泥流ミュージアム) 2024/4/20追記

 

 

 

 

  • 石坂圭介;「三十稲場式土器」の解説文の中で、「特殊な刺突文」として花弁状刺突文を取り上げ「この花弁状刺突文は非常に特徴的であり、遠地で発見されても同定が比較的容易である」
  • 花弁状刺突文について、田中耕作氏は「所謂「三十稲場式土器」の成立について」(『信濃』第3次第 37 巻第4号 ) の文中で刺突文を6つに分類しており、その一つとして花弁状刺突文を取り上げている。その分類は以下の通り;

 

  • 花弁状刺突文 ( 鱗状刺突文 ) について高木晃氏は「土器の移動と交流Ⅱ―東北地方出土の三十稲場式系土器について―」( 第 13 回岩手考古学会研究大会 1994 年発表 ) の文中で「器面をえぐるように突きさし、盛り上がった粘土を指で押さえる手法は三十稲場式に特徴的なものとされている。大木式でも刺突文は一般的だが、花弁状刺突文の手法は中期後葉には用いられない。従来、東北北半ではこの花弁状刺突文を持つ土器を三十稲場式として捉えてきた。」と述べている。
  • 菊池寛子氏は「三十稲場式類似土器の施文方法について」(『岩手考古学』第 16 号 2004) で「北上川中流域の土器では」としながら6遺跡から出土した土器について「刺突の表現と施文具」として表にまとめ、具体的にどのような文様であるかを示している;

 

また、特徴的な刺突文の名称例として、以下の3点について明記;

 

  • 宮城県柴田町台遺跡

 

 

宮城県内の三十稲場式土器の要素をもつとみられる土器

 

  • 三十稲場式土器の要素は刺突破文ばかりでないことは勿論のことである。「く」の字状に外反する口縁部無文帯に、四単位の橋状把手や貼付文を配した深鉢形土器」(田中耕作)など、刺突以外にも多くの要素がある。田中耕作氏は「外圏で確認される三十稲場式土器はこの橋状取手を含めた口縁部と、胴部の刺突文が決め手の主要な要素と言える
 
  • 多少の異論はあるが,新旧二段階の変遷が考えられている。古い段階には称名寺式的な文様を特つものを含み,新段階には堀之内式的な要素を持つとされる。新段階は南三十稲場式と呼称される。三十稲場式と南三十稲場式は甕形土器の形態に関する限り大きな差異はないらしい。

(上野遺跡I 1次調査報告書から)

 

 

  • 三十稲場式と南三十稲場式の違いは,刺突文の変化,口縁部文様の変化にある。後者の段階に入る刺突文は、きわめて微少になり,前者に特徴的であった花弁状の大きな盛り上がりや突癌のあるものは全くなくなるとされる。口縁部の文様は,前者に特徴的な単純な橋状の把手から,堀之内式によく使用される 「8 の字状」或いは円形の貼付けなどが目につくようになるらしい。
  • 新潟県見附市耳取遺跡では,出土土器に旋された刺突文を刺突貝・刺突方法などから4種のものに分類された。これらのうち文様「花弁状刺突文」としたものが,北の内遺跡出土土器の刺突文にあたる。 文様について上記文献より引用すれば次の通りである。「半載またはそれ以上に分割された竹管を工具とし,約20-30度の角度で工具を突刺し,盛り上がった粘土を指で押圧している。」指で、押圧した場合,器面に指文が残るのはあり得ることである。北の内遺跡出土資料の器面の粘土盛上がり部分に指文を確認することができた。
  • 以上,刺突を有する甕形土器について記してきたわけであるが,これのみで三十稲場式土器全体が説明できるのではない。この他に同巧の甕形土器でありながらも刺突文の変わりに縄文或いは撚糸文を持つもの,耳取遺跡 B 群第 6 類土器とされるものがある。これらの土器と蓋形土器をもって三十稲場式を表わす基本的なセットと考えることができるのではないだろうか。
 
 
寿能泥炭層遺跡から出土(埼玉歴民館、常設展示.@2022/7/3) 三国山脈を越えて埼玉エリアとも交流があったようす。発掘した縄文土器の声が聞けたようで嬉しい。
 
 
佐久市埋文センターこう考古遺物展示室(2023/3/1)
 
 
 
追記 2023/7/28-29 奥会津の縄文行
三十稲葉式壺(稲荷原遺跡 @三島町 奥会津)
 
 
三十稲葉式壺(稲荷原遺跡 @三島町 奥会津)
 
 
三十稲葉式壺(長者屋敷遺跡 @阿賀町 新潟)