今年も猛暑です。外では蝉がワシワシと鳴いています。この声の主は「クマ蝉」。熊の名を頂く蝉です。

私は静岡県の東部地方の山間部で育ちました。子ども時代の蝉のイメージ(夏のイメージ)は「みーんみんみん」と鳴くミンミン蝉です。他はアブラ蝉・ニイニイ・ひぐらし・つくつく法師です。ある時、デカくて煩く鳴く蝉の存在を知ります。夏休みに沼津の親類宅を訪ねていた時、ミンミン蝉の様に透き通った羽を持つ大きな蝉を見付けました。名はクマ蝉。小学6年生の私は、早速、百科事典で調べてみますと、「沼津以西」に生息する大型の蝉で「クマ蝉」と書かれていました。合点がいきました。そうか沼津より西かぁ。だから見たことないんだ、安心したような気分になりました。

蝉の世界でも変異が起こっているようです。55年程前は沼津以西と言われたクマ蝉が「東上」し、今や関東地域でも盛んに鳴いているようです。御殿場市では未だミンミン蝉が夏を謳歌していますが、ミンミンの天下もいつまで続くのでしょうか。クマ蝉の東上とともに、かつて一番個体数が多かった油蝉の数も減っているようです。これらの蝉の世界での覇権の推移の原因は温暖化・乾燥化とも言われます。

　子どもの頃の憧れの昆虫は「ミヤマクワガタ」です。私の地方では「はいのう(背嚢)」と呼んでいました。ノコギリクワガタに比べると数は少ないものの、年に何匹かは必ずゲット出来て捕獲は自慢でした。次のヒーローはノコギリ。カブト虫よりはクワガタ型が人気です。

近年、クワガタも激減しています。ミヤマに至っては山や里で捕ってくるのは至難ですし、ノコギリすら中々見つかりません。居ても小クワガタ。クワガタの減少も生態系の変化と言われます。かつて薪に使用されたクヌギやナラの木は、建材用の杉や桧に植え代わり、人が入らない里山では竹が暴走しクヌギたち落葉広葉樹を駆逐するケースもあります。

地球は2万年から10万年のサイクルで「日射量変動」してきたそうです。寒冷化と温暖化を繰り返すと言う意味です。地球の永々無窮と続く自然のサイクルであれば受入れべきものですが、温暖化の原因が人類起因であるならば、身近な昆虫の変化も無視できるものではないでしょう。

子どもの頃、開け放った家の窓から飛び込んだミヤマクワガタに、鼻を挟まれ驚き逃げた飼い猫が懐かしい思い出です。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(雀)

蝉とクワガタ