私のSSTR2020が始まったのは、SSTR2019が終わってからだった。19年にタンデムで初参戦し、その感動と余韻が冷めず、再び千里浜のゴールと感動を想い、19年10月には、単純に家内と富士山を眺めながら富士の麓を走りたいとの発想から、富士市の海岸端で日の出を拝み、北に上って、ビーナスライン、北アルプス大橋、白川郷を経て千里浜ゴールというコースを決め、5月末の土曜を予測して宿を押さえ、あとはエントリーの難関をクリアするだけの完璧な計画を立てていた。年が明け、その頃既にコロナ禍の話は聞こえていたが、SSTRは予定通りに開催されると思っていた。雲行きがあやしくなってきた。20年2月末に、10月延期開催の話も出てきた。SSTR2019が終わった当初タンデムでエントリーをすることは家内と決めたことだった。3月8日、最初の難関だった5000台枠にタンデムでエントリーが叶った。その難関は序章に過ぎなかった。4月になって10月24日の延期が決まった。予約してた宿を全てキャンセルした。それだけでは済まなかった。10月開催となれば日照時間が3時間短くなる。計画していた宮崎からフェリーを使っての4泊5日のコースを見直さなければならない。それに家内が10月は一緒に行けないと言い出した。参戦するか否か、それを含めて全てを白紙にしなければならなかった。半年以上温めていたものが壊れた感覚があった。気が抜けて、もう今年は諦めようか。そう考えていた。それでも諦められなかった。暫くし計画を根本から練り直してみることにした。タンデムエントリーのままソロ参戦とし、4日間を使い陸路で千里浜を目指すことを考えた。しかし、それは強行軍、1日500キロは必至となる。果たして行けるのか。職場や家族がコロナ禍で否定的な意見であり、決行できるか否か分からない状況だった。計画だけは立ておこうと決めた。初日、大分の佐賀関港から四国に渡り、四国を横断して徳島県で前泊し、当日は淡路島の明石海峡大橋辺りをスタート、北に上り舞鶴から日本海に出て、福井の漁火街道を経て石川に入り千里浜にゴール、そう新たな計画を立て、宿の予約を入れた。一難さってまた一難。8月末に、10月24日開催が、オープン制の開催となり24日の開催がなくなった。主催者が苦渋の選択を迫られたコロナが憎かった。もう会社を休めるのも10月末が限界で大幅な日程の変更は出来なかった。マイSSTRは、予定を1日だけずらした10月25日(日曜)に決行せざるを得なかった。そう決めたのは9月だった。行けるのか行けないのか、直前までコロナ禍に悩まされた。それでも日は昇った。10月25日午前6時13分、淡路SAで快晴のサンライズに道中の安全を祈願しスタートをすることができたのだ。寂しいことに、その空間に志を同じとする仲間はなく、舞台の幕は孤独の中で静かに上がった。ドラマチックな出会いはなく、淡々と福井県敦賀市までは高速を走り、通るPA・SAでポイントを貯めていった。家族から人との接触を避けるように言われていた。左手に波しぶきをあげる日本海を観ながらひたすら走った。この日、千里浜は波が高く規制されていることはネット情報で知っていたが、身勝手なもので、それでも直前で規制解除になって千里浜を走れるのではなどと淡い希望を持っていた。それは夢物語だった。ゴール間近の道の駅高松に到着してそれが分かった。砕ける波のしぶきで一面霧がかったようになり、砂浜がほとんどない状況だった。仕方ない、そう諦めてゴールの千里浜レストハウスを目指した。ゴールゲートでは多くのライダーとカメラマン、それに風間晋之助さんが迎えてくれた。完走した。ゲートをくぐり、エンジンを切りバイクを止めたとき肩の力が抜けた。着いた。ヘルメットを脱いで、マスクを着けレストハウスに向かうとライダーで賑わっていた。受付を済ませてレストハウス2階に行くと風間深志さんやスタッフが歓迎してくれた。ゴールを皆で祝っていた。私は気が抜けたようになっていた。千里浜に何があるのか探しに来たはずだった。しかし、そこには気が抜けた自分が居た。ソロでのゴールはこんなにも寂しいものか、やっぱり家内とタンデムで来たかった、そんな悔いも感じていた。千里浜の海岸に出て波の音を聞いてみたが、その浜にバイクはなく、激しく波打つ海が悲しく思えた。こんなんでSSTR2020を終わっていいのだろうか。そんな気持ちのまま、日が沈み、千里浜をあとにした。千里浜からどんどん離れて行った。その道中で、ふと思った「また来たい」「また千里浜に来たい」。ハンドルを握ったまま高揚し目頭が熱くなっていた。見つけたぞ、千里浜で探していたものを見つけた。これが探していた答えだと思った。夢と希望をもらったよ、ありがとうSSTR、ヘルメットの中でそう声を出していた。また千里浜に来たい、その気持ちがある限り、私のバイクライフは終わらない、そう感じていた。
私のSSTR2020はこうして終わった。
そして、新たな挑戦、SSTR2021が始まった。

