今年の夏休みは…


旅行を二段構えにしたのである。


というのも…


我が愛しき娘も小学校4年生となり、かなり活動的になってきたし…


「〇〇をしたい」とか…


「〇〇に行きたい」とか…


意思表示も頻繁になってきたし…


その全てを叶えることは不可能であっても…


時間や、経済的な面や…そういったものが許す限りは


出来るだけ様々な行動をさせたい…


という…至って当たり前の親心なのであった。


そんな訳で…


渋谷と原宿を訪れた東京旅行に引き続いて…


夏休み旅行の第二弾は…


「奈良!」…なのである


奈良…うーん!微妙…


近いなぁ…同じ近畿圏だし


それはともかくとして…


とりあえず初日は…早速



京都から近鉄線に乗って…近鉄奈良駅へと向かう


私はあらかじめ、近鉄特急の座席を予約しておいたので…


つまり座れないことは、絶対にあり得ない訳だから



悠々と、気楽に電車へと乗り込む。


それにしても…京都周辺を訪れると毎回思うのだが…


やはり乗客の外国人比率が圧倒的に高い。


私たちが乗った車両も、私たち以外は全て外国人であり…


当然聞こえてくる言語は全て…外国語である


まあ…


京都や奈良…その街や寺社を巡るというのが、我が国にとって最も価値の高い観光資源なのだろう…


そんなことは…敢えて言わずとも昨今の我が国にとっては当たり前の事実であり…


つまり、京都と奈良を短時間で結ぶ近鉄特急は、観光目的で来日した数多くの外国人が利用し…


その一方で近鉄の普通電車は、沿線の近隣に住む日本人が生活路線として利用するという…


そんな棲み分けが、この路線では既に成立しているのだと思う。


私は車窓から…通過する近鉄沿線の駅に集う多数の日本人たちを眺めつつ…


それとは正反対に、外国語ばかりが聞こえてくるこの特急車内…


そのギャップを肌で感じながら…


このような昨今のインバウンド状況…などについてあれこれと思いを馳せ…


ゴトゴトと、35分ほど電車に揺られていたのであった。


さぁ!


そうこうしているうちに…


あっという間に近鉄奈良駅へと到着だ。


やっぱり奈良は近い!


さて、我々は午前11時過ぎに奈良へと到着したのだが…


とにかく、この日は晴れて暑かった!


奈良の最高気温は36℃だったらしい。


そんな中…


本来なら私は、この奈良初日に東大寺を訪れるつもりでいたのだが…


こんな暑い日に東大寺までの長い道のりを歩くことは、どう考えてもかなりハードな所業であり…


我が愛しき娘は、間違いなくヘバってしまうと思ったので…


急遽予定を変更し、東大寺に関しては曇り予報の翌日…に改めて訪問することとしたのである。


そこで初日は…


近鉄奈良駅から伸びる、「東向き商店街」や「もちいどのセンター街」といった…


多数の観光客が訪れる、そして直射日光を浴びることのない、人気のアーケード街を散策することにした。


いやぁ、それにしても…


その圧倒的な外国人比率には、まさに圧倒されてしまう思いだった。


だって、たとえば…


我が長男が住む京都をウロウロしていると、当然かなりの数の外国人を目にすることは確かなのだが…


それと同等以上に、京都市内を動き回っている日本人を目にする。


つまり外国人は多いけれど、なんだかんだで日本人比率の方が高いし、やはりここは日本だ…そう思えるのである。


しかし…


この近鉄奈良駅周辺や、そこにある東大寺をはじめとした観光地に限って見てみると…


この周辺では、おそらく日本人より外国人の方が圧倒的に多いと思われるのだ。


そう…まるで外国を訪れたみたいに…


なーんて…


何で奈良に来てまで、さっきから私は外国人のことばかり考えているんだ?…と、自身を戒める。


純粋に旅行を楽しまなければ!


そこで気分を改めて、この暑い中…あちこちのお店を冷やかしながら商店街をウロついていたのだった。


しかし…そんなこんなしているうちに…


我が愛しき娘の顔は、この猛烈な暑さのため赤らんできて…やっぱり熱中症が心配になってくるし


あぁ、可哀想に…何とかこの状況を脱出して


そろそろ昼食がてら、どこか冷房の効いたところで涼まなければ…ということで



「ナラニクル」…なる場所へと入ったのである。


「ナラニクル」…「奈良に来る」


うーん…何ともコメントし難いネーミングだ


そう…


ここは、奈良の観光案内施設…みたいな機能を備えた建物であり…


その中には小洒落たカフェがある…という情報を私はあらかじめリサーチしていたから…


避暑目的がてら…


ここでランチタイム…をとることにした



いやぁ、やっぱり暑い中歩いたらこれでしょ…



さらにはフィッシュ&チップス…ちょっと冷凍食品?感が強いのは御愛嬌ということで…


ここでは結構のんびりと過ごし…調子に乗って2杯目の黒ビールも飲んだし



あぁ、正直もう暑い中歩くのはシンドいし…


今日のところは、これで終わっても良いんじゃない?…とばかりに


本日宿泊する旅館…そのチェックイン時刻である15時まで、ここでダラダラと過ごすのも良いんじゃないかなぁ…とか怠惰な精神が頭をもたげそうになったものの


そこから何とか、もう少しだけ頑張って…


我々は、この周辺をブラブラと散策したのである。


そして15時ちょうどには、今回の旅行の最大の目的である旅館へとチェックイン。


そう…何を隠そう


今回の旅行の目的は…


奈良を観光したい…とかではなく…


この旅館に泊まることこそが、我々にとって最も重要なことだったのである。


では、果たしてそれは何故なのか?


ここでその答えを言うならば…


この旅館を経営している方…その経営者の娘さんこそが


我が愛しき次男坊の彼女だから…なのであった。


コロナ禍の開始となった2020年に…我が次男坊とその彼女である二人は立命館大学へと入学し…


その年の初夏には交際を始め…


現時点で既に交際は5年目を迎え…


そんな彼女はこの春に…立派な社会人になったのにも関わらず、我が次男坊は留年して未だ大学生の身分であり…


立場的にとか、経済的にとか…様々な面でその格差が拡大する一方であり…


よって…


こんなにショボいウチの次男坊は…


きっといつか彼女にフラレてしまうだろうから…


せめてフラレる前に、一度くらいは彼女の実家の旅館に泊まってみたいなぁ…みたいな


そう…私たちは以前から


是非ともこの旅館に泊まってみたいと切に願っており…


紆余曲折を経て…


ついにそれを実行に移した…そんな次第なのである。


だから今回の旅行も…


我が愛しき娘が言い出したセリフ…


「お兄ちゃんの彼女の旅館に泊まってみたい!」


そんな要望に応えて…のことなのであった。


いやぁ…良い感じでした



興福寺のそばにある猿沢池…とても風情のある立地


そこに佇む…クラシックな雰囲気の純和風の旅館



そして…


その旅館と道を挟んだ隣には、同じく経営する今風の小洒落たホテルが建ち並び…


「あぁ、ウチのバカ息子は…なんて彼女と付き合ってるんだぁ…」


そう…


ちょっと落ち込んでしまうくらいの感じ…なのであった。


そんな…


彼女の実家が経営する旅館へとチェックインし…


もうあとは、何も言うべきことは存在しないのである。


私たちは、ただただ…この旅館を満喫しつつ…


初日の夜は更けて行くのであった。