~2013年2月11日~
俺が「サッカー」という旅に出てからおよそ20年の月日が経った。
8歳の冬、寒空のもと佐賀のとある小学校の校庭の片隅からその旅は始まった。
あの頃はボールを蹴ることに夢中になり
必死でゴールを決めることだけを目指した。
そして、ひたすらゲームを楽しんだ。
サッカーボールは常に傍らにあった。
この旅がこんなに長くなるとは俺自身思いも寄らなかった。
佐賀の県選抜から九州選抜、U-15、U-17、そしてJリーグの練習生へ
その後、
佐賀楠葉クラブ
びわこ成蹊スポーツ大学I1
海外、イタリアへも渡った。
世界中のあらゆる場所でいくつものゲームを戦った。
サッカーはどんなときも俺の心の中心にあった。
サッカーは本当に多くのものを授けてくれた。
喜び、悲しみ、友、そして試練を与えてくれた。
もちろん平穏で楽しいことだけだったわけではない。
それ故に、与えられたことすべてが俺にとって素晴らしい“経験”となり、
“糧”となり、自分を成長させてくれた。
半年ほど前からこのプロフットサルセレクションを最後に
プロサッカー、フットサル界から引退しようと決めていた。
何か特別な出来事があったからではない。その理由もひとつではない。
今言えることは、プロサッカーという旅から卒業し“新たな自分”探しの旅に出たい。
そう思ったからだった。
サッカーは世界で最大のスポーツ。
それだけに、多くのファンがいて、また多くのジャーナリストがいる。
選手は多くの期待や注目を集め、そして勝利の為の責任を負う。
時には、自分には何でも出来ると錯覚するほどの賞賛を浴び
時には、自分の存在価値を全て否定させられるような批判に苛まれる。
プロになって以来、「サッカー、好きですか?」と問われても
「好きだよ」とは素直に言えない自分がいた。
責任を負って戦うことの尊さに、大きな感動を覚えながらも
子供のころに持っていたボールに対する瑞々しい感情は失われていった。
けれど、プロとして最後のゲームになった2月11日のセレクション。
サッカーを愛して止まない自分が確かにいることが分かった。
自分でも予想していなかったほどに、心の底からこみ上げてきた大きな感情。
それは、傷つけないようにと胸の奥に押し込めてきたサッカーへの思い。
厚い壁を築くようにして守ってきた気持ちだった。
これまでは、周りのいろんな状況からそれを守る為
ある時はまるで感情が無いかのように無機的に、またある時には敢えて無愛想に振舞った。
しかし最後の最後、俺の心に存在した壁は崩れすべてが一気に溢れ出した。
最後のアリーナの感触を心に刻みつつ
込み上げてきた気持ちを落ち着かせたのだが、最後に応援してくれた友人。
もう一度その感情が噴き上がってきた。
そして、思った。
どこの国のどんなスタジアムにもやってきて
声を嗄らし全身全霊で応援してくれた
本当にみんながいたからこそ、10年もの長い旅を続けてこられたんだ、と…。
サッカーという旅のなかでも「中盤」は、俺にとって特別な場所だった。
最後となるセレクション戦いの中では、選手たち、スタッフ、そしてファンのみんなに
「俺は一体何を伝えられることが出来るのだろうか」、それだけを考えてプレーしてきた。
俺は今回のセレクション
個人の技術レベルは本当に高く、その上スピードもある。
時には励まし、時には怒鳴り、時には相手を怒らせてしまったこともあった。
セレクションがこのような結果に終わってしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
俺がこれまでサッカーを通じてみんなに何を見せられたのか、
何を感じさせられたのか、このセレクションの後にいろいろと考えた。
正直、俺が少しでも何かを伝えることが出来たのか…
ちょっと自信がなかった。
けれどみんなからの不幸のmailをすべて読んで、また誕生日メッセージ、
俺が伝えたかった何か、必要だと思った何か、
それをたくさんの人が理解してくれたんだと知った。
それが分かった今、サッカー始めてからの俺の“姿勢”は
間違っていなかったと自信を持って言える。
何も伝えられないままボールから離れる
とても辛いことだと感じていた。しかし、俺の気持ちを分かってくれている“みんな”が
きっと次の代表、Jリーグ、そして日本サッカーの将来を支えてくれると信じている。
だから今、俺は、安心して旅立つことができる。
最後にこれだけは伝えたい。
これまで抱き続けてきた“誇り”は、
これからも俺の人生の基盤になるだろうし、自信になると思う。
でもこれは、みんなからの“声”があったからこそ
守ることが出来たものだと思う。
みんなの声を胸に、誇りを失わずに生きていく。
そう思えればこそ、この先の新たな旅でどんな困難なことがあろうと
乗り越えていけると信じられる。
新しい旅はこれから始まる。
今後、プロの選手としてピッチに立つことはないけれど
サッカーをやめることは絶対にないだろう。
旅先の路地で、草むらで、小さなグラウンドで、誰かと言葉を交わす代わりに
ボールを蹴るだろう。子供の頃の瑞々しい気持ちを持って――。
これまで一緒にプレーしてきたすべての選手、関わってきてくれたすべての人々、
そして最後まで信じ応援し続けてきてくれたみんなに、心の底から一言を。
“ありがとう”
WATA
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