いずれの都道府県の区域にも属さなかつた土地を県告示で市町村の区域に編入できるか。
決定処分取消等請求事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷/昭和34年(オ)第301号
【判決日付】 昭和36年6月9日
【判示事項】 一、いずれの都道府県の区域にも属さなかつた土地を県告示で市町村の区域に編入できるか。
二、登記所の管轄権の有無は判決時をもつて定めるべきか。
【掲載誌】 訟務月報7巻8号1622頁
最高裁判所裁判集民事52号129頁
【評釈論文】 別冊ジュリスト71号24頁
別冊ジュリスト125号18頁
地方自治法
第六条 都道府県の廃置分合又は境界変更をしようとするときは、法律でこれを定める。
② 都道府県の境界にわたつて市町村の設置又は境界の変更があつたときは、都道府県の境界も、また、自ら変更する。従来地方公共団体の区域に属しなかつた地域を市町村の区域に編入したときも、また、同様とする。
③ 前二項の場合において財産処分を必要とするときは、関係地方公共団体が協議してこれを定める。但し、法律に特別の定があるときは、この限りでない。
④ 前項の協議については、関係地方公共団体の議会の議決を経なければならない。
第六条の二 前条第一項の規定によるほか、二以上の都道府県の廃止及びそれらの区域の全部による一の都道府県の設置又は都道府県の廃止及びその区域の全部の他の一の都道府県の区域への編入は、関係都道府県の申請に基づき、内閣が国会の承認を経てこれを定めることができる。
② 前項の申請については、関係都道府県の議会の議決を経なければならない。
③ 第一項の申請は、総務大臣を経由して行うものとする。
④ 第一項の規定による処分があつたときは、総務大臣は、直ちにその旨を告示しなければならない。
⑤ 第一項の規定による処分は、前項の規定による告示によりその効力を生ずる。
平成十六年法律第百二十三号
不動産登記法
(申請の却下)
第二十五条 登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、登記の申請を却下しなければならない。ただし、当該申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは、この限りでない。
一 申請に係る不動産の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないとき。
二 申請が登記事項(他の法令の規定により登記記録として登記すべき事項を含む。)以外の事項の登記を目的とするとき。
三 申請に係る登記が既に登記されているとき。
四 申請の権限を有しない者の申請によるとき。
五 申請情報又はその提供の方法がこの法律に基づく命令又はその他の法令の規定により定められた方式に適合しないとき。
六 申請情報の内容である不動産又は登記の目的である権利が登記記録と合致しないとき。
七 申請情報の内容である登記義務者(第六十五条、第七十七条、第八十九条第一項(同条第二項(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)及び第九十五条第二項において準用する場合を含む。)、第九十三条(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)又は第百十条前段の場合にあっては、登記名義人)の氏名若しくは名称又は住所が登記記録と合致しないとき。
八 申請情報の内容が第六十一条に規定する登記原因を証する情報の内容と合致しないとき。
九 第二十二条本文若しくは第六十一条の規定又はこの法律に基づく命令若しくはその他の法令の規定により申請情報と併せて提供しなければならないものとされている情報が提供されないとき。
十 第二十三条第一項に規定する期間内に同項の申出がないとき。
十一 表示に関する登記の申請に係る不動産の表示が第二十九条の規定による登記官の調査の結果と合致しないとき。
十二 登録免許税を納付しないとき。
十三 前各号に掲げる場合のほか、登記すべきものでないときとして政令で定めるとき。
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
本件上告理由は別紙のとおりである。
論旨は、昭和三一年七月九日登記官史が職権によつてした本件仮登記抹消までの経過を述べ、右抹消の違法を主張するのであるが、原判決も説明するように、昭和二七年八月法律三〇六号による地方自治法の改正前においては、久六島のようにいずれの都道府県の区域にも属しなかつた土地を市町村の区域に編入することは都道府県の境界変更になるので地方自治法六条一項により法律をもつて定めることを要したものと解すべく、従つて昭和二六年九月二八日青森県告示にかかる久六島を深浦町の区域に編入する処分は無効といわなければならない。従つて昭和二七年一月本件仮登記の当時においては、久六島を管轄する法務局、地方法務局又はその支局、出張所は存在しなかつたのであつて、青森地方法務局深浦出張所は上告人の仮登記申請があつても、不動産登記法四九条一号に基き却下しなければならなかつたのである。従つて右申請を受理し登記を完了した後においても、登記官吏は同法一四九条ノニ乃至五により職権をもつて抹消すべく、右抹消を是認した原判決に、所論のように法律の解釈を誤つた違法はない。なお論旨は、法務局出張所の管轄権の有無は判決時をもつて定めるべき旨を主張するのであるが、昭和三一年九月一五日に久六島は深浦町に編入され、右深浦出張所が久六島を管轄するに至つたとはいえ、本件仮登記当時は勿論抹消当時においても右管轄権がなかつたのであるから、適法に抹消された後に管轄権が生じたからといつて本件抹消を違法とすべき理由はない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。