会社更生法244条2項と憲法14条1項 売掛代金請求事件 最高裁判所大法廷判決 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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会社更生法244条2項と憲法14条1項

 

 

              売掛代金請求事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/昭和42年(オ)第1168号

【判決日付】      昭和45年6月10日

【判示事項】      会社更生法244条2項と憲法14条1項

【判決要旨】      会社更生法244条2項は憲法14条1項に違反しない。

【参照条文】      憲法14-1

             会社更生法240-2

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集24巻6号499頁

 

 

事案の概要

 本判決は、会社更生法240条2項の法意を説示し、会社更生法240条2項において、更生計画が更生会社の保証人等に対し影響を及ぼさない旨定めているのは、「事柄の性質に即応した合理的な差別」というべきであつて、何ら憲法14条1項に違反するものではない旨を判示する。

 

 

憲法

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 

 

平成十四年法律第百五十四号

会社更生法

(更生計画の効力範囲)

第二百三条 更生計画は、次に掲げる者のために、かつ、それらの者に対して効力を有する。

一 更生会社

二 すべての更生債権者等及び株主

三 更生会社の事業の更生のために債務を負担し、又は担保を提供する者

四 更生計画の定めるところにより更生会社が組織変更をした後の持分会社

五 更生計画の定めるところにより新設分割(他の会社と共同してするものを除く。)、株式移転(他の株式会社と共同してするものを除く。)又は第百八十三条に規定する条項により設立される会社

2 更生計画は、更生債権者等が更生会社の保証人その他更生会社と共に債務を負担する者に対して有する権利及び更生会社以外の者が更生債権者等のために提供した担保に影響を及ぼさない。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告人の上告理由第一点について。

 債務引受に関する原審の事実認定は、原判決(その引用する第一審決を含む。以下同じ。)の挙示する証拠に照らし、是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、適法な原審の事実認定を非難するに帰し、採用することができない。

 同第二点について。

 所論は、会社更生法二四〇条二項の規定は、憲法一四条一項に違反する旨主張する。

 しかし、憲法一四条一項は、国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく、差別すべき合理的な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、事柄の性質に即応して合理的と認められる差別的取扱をすることが何ら右法条の否定するところでないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和三七年(オ)第一四七二号同三九年五月二七日大法廷判決、民集一八巻四号六七六頁参照)。

 ところで、会社更生法は、窮境にはあるが再建の見込のある株式会社について、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持更生を図ることを目的とするものであつて、そのために、裁判所の監督の下に法定の厳格な手続に従つて作成される公正かつ衡平な更生計画によつて、会社に対する債権は、必要やむを得ない限度において変更をうけ、ひいては、その限度において、会社は法定の免責をうける制度が定められているのである。

 他方、会社の保証人その他会社とともに債務を負担する者および物上保証人(以下「保証人等」という。)の負担する債務および責任は、会社債権者の債権を人的または物的に担保して、債権者が会社から完全を満足をうけられない場合に備えることをその主要な目的とするものであり、会社が窮境に陥つた場合にこそ、その担保としての効用をはたすべきものである。

 そして、同法二四〇条二項は、右のような免責制度の目的および性質にかんがみ、会社債権者の犠牲と保証人等の負担する債務および責任の性質を実質的合理的に考量し、保証債務や担保権の附従性および連帯債務の連帯性に関する民法所定の原則の例外として、更生計画の効力につき会社と保証人等との間に差異を設け、更生計画が保証人等に対し影響を及ぼさないことを定めたものと解すべきである。

 したがつて、これは、事柄の性質に即応した合理的な差別というべきであつて、会社更生法二四〇条二項は、何ら憲法一四条一項に違反するものではないのである。論旨は採用することができない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所大法廷