被告人の承諾なく、職務質問に付随する所持品検査として許容される限度を超えた捜索によって発見したものであり、本件覚せい剤及びその鑑定書は、違法収集証拠として、無罪が言い渡された事例
覚せい剤取締法違反被告事件
【事件番号】 東京高等裁判所判決/平成29年(う)第1845号
【判決日付】 平成30年3月2日
【判示事項】 被告人が、営利の目的で、みだりに覚せい剤粉末10.078グラムを所持したという公訴事実につき、本件覚せい剤は、警察官らが令状を得ることなく、被告人の承諾なく、職務質問に付随する所持品検査として許容される限度を超えた捜索によって発見したものであり、本件覚せい剤及びその鑑定書は、違法な捜索と密接に関連する証拠であるが、本件バッグに対するプライバシー保護の必要性は相当程度低下していたことや所持品検査の必要性、緊急性が高かったこと、また、警察官らに令状主義に関する諸規定を潜脱する意図があったとは認められないこと等を考慮すると、違法の程度は必ずしも重大であるとはいえず、本件覚せい剤等を証拠として供することが将来の違法捜査の抑制の見地から相当でないとも認められないなどとして証拠能力を肯定して公訴事実を認めた原判決が破棄され、無罪が言い渡された事例
【参照条文】 刑事訴訟法317
刑事訴訟法336
刑事訴訟法379
刑事訴訟法400ただし書
覚せい剤取締法41の2-2
覚せい剤取締法41の2-1
【掲載誌】 東京高等裁判所判決時報刑事69巻21頁
判例タイムズ1456号136頁
判例時報2393・2394合併号63頁
刑事訴訟法
第三百十七条 事実の認定は、証拠による。
第三百三十六条 被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。
第三百七十九条 前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき法令の違反があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。
第四百条 前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の裁判所に移送しなければならない。但し、控訴裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び控訴裁判所において取り調べた証拠によつて、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。