公の施設である市民会館の使用を許可してはならない事由として市立泉佐野市民会館条例7条1号の定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」の意義と憲法21条、地方自治法244条
最高裁判所第3小法廷判決/平成元年(オ)第762号
平成7年3月7日
損害賠償請求事件
【判示事項】 1 公の施設である市民会館の使用を許可してはならない事由として市立泉佐野市民会館条例(昭和38年泉佐野市条例第27号)7条1号の定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」の意義と憲法21条、地方自治法244条
2 「関西新空港反対全国総決起集会」開催のための市民会館の使用許可の申請に対し市立泉佐野市民会館条例(昭和38年泉佐野市条例第27号)7条1号が使用を許可してはならない事由として定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」に当たるとして不許可とした処分が憲法21条、地方自治法244条に違反しないとされた事例
【判決要旨】 1 公の施設である市民会館の使用を許可してはならない事由として市立泉佐野市民会館条例(昭和38年泉佐野市条例第27号)7条1号の定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」とは、右会館における集会の自由を保障することの重要性よりも、右会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度としては、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であり、そう解する限り、このような規制は、憲法21条、地方自治法244条に違反しない。
2 「全関西実行委員会」による「関西新空港反対全国総決起集会」開催のための市民会館の使用許可の申請に対し、市立泉佐野市民会館条例(昭和38年泉佐野市条例第27号)7条1号が使用を許可してはならない事由として定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」に当たるとして不許可とした処分は、当時、右集会の実質上の主催者と目されるグループが、関西新空港の建設に反対して違法な実力行使を繰り返し、対立する他のグループと暴力による抗争を続けてきており、右集会が右会館で開かれたならば、右会館内又はその付近の路上等においてグループ間で暴力の行使を伴う衝突が起こるなどの事態が生じ、その結果、右会館の職員、通行人、付近住民等の生命、身体又は財産が侵害される事態を生ずることが客観的事実によって具体的に明らかに予見されたという判示の事情の下においては、憲法21条、地方自治法244条に違反しない。
(1、2につき補足意見がある。)
【参照条文】 憲法21
地方自治法244
市立泉佐野市民会館条例(昭和38年泉佐野市条例第27号)7
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集49巻3号687頁