最高裁判所第3小法廷決定/平成6年(あ)第894号
平成7年5月30日
『平成7年重要判例解説』刑事訴訟法事件
覚せい剤取締法違反被告事件
【判示事項】 採尿手続に違法があっても尿の鑑定書の証拠能力は肯定できるとされた事例
【判決要旨】 警察官が職務質問に付随して行う所持品検査として被疑者の運転していた自動車内を承諾なく調べた行為及びこれに基づき発見された覚せい剤の所持を被疑事実とする現行犯逮捕手続に違法があり、引き続いて行われた採尿手続も違法性を帯びるが、警察官は、停止の求めを無視して自動車で逃走するなどの不審な挙動を示した被疑者について、覚せい剤の所持又は使用の嫌疑があり、所持品を検査する必要性、緊急性が認められる状況の下で、覚せい剤の存在する可能性の高い右自動車内を調べたものであり、また、採尿手続自体は、何らの強制も加えられることなく被疑者の自由な意思による応諾に基づいて行われているなどの判示の事実関係の下においては、採尿手続の違法はいまだ重大とはいえず、右手続により得られた尿の鑑定書の証拠能力は肯定することができる。
【参照条文】 憲法35
警察官職務執行法2-1
刑事訴訟法1
刑事訴訟法218-1
刑事訴訟法221
刑事訴訟法317
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集49巻5号703頁
裁判所時報1148号199頁
判例タイムズ884号130頁