福岡地方裁判所小倉支部判決平成28年4月19日
損害賠償請求事件
【判示事項】 1 被告Y1社が経営するデイサービスのA営業所で介護職員として勤務していた原告Xに対して,妊娠を理由とする業務軽減に関する面談時に被告Y2が行った発言につき,嫌がらせの目的は認められないにしても,相当性を欠き,社会通念上許容される範囲を超えたものであって,妊産婦労働者の人格権を害するものとされた例
2 Y2が,Xとの面談から1か月経っても,業務軽減に対応しなかったことが,従業員の職場環境を整え,妊婦であったXの健康に配慮する義務に違反したものとして,Y2の不法行為責任およびY1社の使用者責任が肯定された例
3 Xによる妊娠の報告を受けてから,2度目の業務軽減の申出を受けるまでの約4か月間,Y1社が業務軽減等の措置を執らなかったことが,労働契約上の就業環境整備義務に違反したものとして,Y1社の債務不履行責任が肯定された例
4 Y2の言動によるXの精神的苦痛は相応のものではあるが,嫌がらせの目的があったとはいえず,また,業務軽減に適切に対応しなかったことで,ことさらにXに負担を負わせたなどの事情も認められないとして,慰謝料につき35万円が相当とされた例
5 業務別時給にXが合意していたと認められ,また,業務によって時給が異なることが直ちに不合理ともいえないとして,すべてを介護職員時給で計算した場合との賃金の差額請求が棄却された例
【参照条文】 民法415
民法709
民法715
労働基準法65-3
雇用均等法9-3
【掲載誌】 判例時報2311号130頁
労働判例1140号39頁