結婚前に主人からよく聞かされた話のひとつに、主人が主張先で仲良くなった友だちの奥さまのことがある
この奥さまの事が主人の自慢のタネでして、お酒が入ると嬉しそうに何度も話をしていた
出逢いは主人が出張で京都に行った時、仕事の空き時間にその友人にご結婚なさったばかりの奥さまを紹介されたそうで、
奥さまはお着物を召されていて明るくハキハキとした素敵な方だったとか…
つい皆で話が弾み、次の仕事に遅れそうになってしまった主人を奥さまが車で現地まで送って下さり、「私と会って頂いた事でご迷惑をおかけしてしまい…」と深々と頭を下げてご挨拶なさっていたと何度も語る主人…それにしても何でそんなにいつも嬉しそうに話すのだろうと思っていた
実際、私がそのご夫妻にお会いしたのは数年後だったが主人の言う通り、素敵なご夫妻で奥さまは謙虚でいて明るくお茶目な方、私も会うなり大ファンになってしまう
その上、主人へのお褒めの言葉が半端なくて、そんなに褒めたらサンマさんじゃないけれど主人の個性死んじゃうよって感じで、まるで借りてきた猫のようになってしまった主人
完全に鼻の下がのびのび…そうか、それで主人は奥さまの事を嬉しそうに話していたんだと分かる
私は(その素晴らしい旦那さまとはいったいどこの誰さんですか?!)と少々ツッコミを入れたくなってしまいそうになったけれど、その内奥さまは私の事まで大絶賛…
私も当然、鼻の下が完全に伸び切った
先日、その奥さまに年始のご挨拶でお電話すると、昔家族二組で一緒に行った美味しい串揚げのお店の話が出て、いつか二人で行きたいですねと話が盛り上がる
彼女の旦那さまと三人でとおっしゃらない所に彼女の奥ゆかしさを感じたりもして…
「オレも一緒に行きたいよー!」と言う主人の声が聞こえてきそうよ
それとも奥さまがいつまでも私と交友を深めて下さるのを目を細めて見ているかしらね…
主人の闘病中、奥さまにお会いする機会があったけれど、さすがに私は主人との葛藤の日々を話せなかった
きっと主人もこの奥さまにとってはずっと「素晴らしい人」でいたいだろうなと思ってさ…
他界して月日が経ち、毎朝主人の遺影は笑顔で文句もワガママも言わない。それを前にして手を合わせていると自分の不出来さが際立ってくるような気がする
もし人格障害が主人の病状のひとつと理解していたとしたら、もっと良い対処法があったのかしら…
それともやはり、大きな感情の波には逆らえず悩み苦しむしかなかったかしら…