入院が決定して、病室に入ったのはもう夜の9時を過ぎていた。
旦那さんはとりあえず必要なものや私の夜ごはんを買いに行ってくれた。
病室に入った時はうとうとしていたゆずも、今日から3日間処方になったけいれん止めを飲ませると眠り始めた。
小児科特有の柵のついた小児用ベッドに一緒に横になりながら、痙攣がおきてから今までの事をぼんやりと思いだしていた。なんだか全部リアリティーがなくて、嘘だったんじゃないかなぁって、変に他人事に感じたりした。
でも、隣で眠るゆずは泣きすぎのせいかまぶたも腫れて、顔全体がむくんでいて痛々しくて、どうしてこんなことになっちゃたのかなぁなんて考えたりもした。
その日の夜は結局一睡もできず、久しぶりに夜がとても長く感じた。
ゆずは腹痛のせいか目を閉じたままうなったり泣いたりして寝返りをうっていて、しばらく抱っこしていると落ち着いて待て眠り始めた。朝まで何度かそれを繰り返した。
巡視に来る看護師さんに、「お母さんも寝なきゃ明日からがしんどいよ。」と言ってもらったけど、
変に目が冴えてしまって、目を閉じてもいろんな事が頭の中に浮かんできていた。
看護師で働いていたころの夜の病院の事、子供のころ私の入院に付き添ってくれていた両親の事、
ゆずが生まれてからの事、今日1日の事・・・
考えるのをやめようと思っても、頭の中は変に興奮していた。
そして、長い長い夜が明けて、やっと朝がやってきた。
入院1日目の朝。
7時過ぎに旦那さんと実家の父がやってきた。お父さん、心配で目が覚めたらすぐ家を出て、1時間半もかかるのに来てくれたみたいだった。
3人で話をしていると、ゆずの目が覚めた。でも、視線ははっきりしていないし、言葉もなくて、自分で座るのもやっとという感じだった。
私たち「目が覚めたね、よかったね」って口では言っていたけど、ほんとに元のゆずに戻ってくれるのか内心不安だった。
朝の先生の回診の時、先生がゆずのマグを差し出すと、自分から手をだして受け取って飲もうとした。
それを見て、意識には問題なさそうだし、食事も食べられれば始めてもいいと言ってくれた。
先生の言葉がわかったのか、急に「パン、パン」と初めて言葉を発して、それを聞いて食べたい意欲があるんなら大丈夫か持って少し安心できた。
旦那さんが退屈しないようにとDVDプレーヤーとゆずのだいすきな「お母さんといっしょ」や「いないいないばあ」のDVDをもってきてくれたけど、ゆずはぐったりしていて、ぼんやり眺めているだけだった。
病室の窓からはいつも遊びに来ていた公園が見えて、ついこの前まであそこで走り回って遊んでいたのになぁってなんだか切なくなった。
入院2日目。
前日に比べると夜も穏やかに眠れていて、朝6時半に目が覚めて、オーバーテーブルの上の苺を欲しがる。
食欲が出てきたみたいで、ご飯がくると手を叩いて喜ぶ。
昼前に実家の両親がお見舞いに来てくれる。
午前中はまだぼんやり、ぐったりしていた感じが強かったけど、お昼ごはんを食べたら急に元気が出たみたいで、DVDを見て手拍子したり、振付をまねしたり、ばあばに何かを説明するみたいに一生懸命話しかけている。
入院してから、回診や検温、処置の度に号泣して、その時体や手にぐーっと力が入る感じがあって、また痙攣になるんじゃないかと不安だったけど、二日目の午後にはそれも治まってきていた。
反応も元通りになってきたし、お腹の状態もよさそうなので、翌日退院が決定する。
入院3日目。
入院前は激しい下痢だったけど、入院後は全く便が出ていなかったので浣腸して便を出す。
まだ白っぽくはあったけど、だいぶ便は固くなっていた。
左足の点滴を外すと、シーネで固定してあったししばらく歩いていなかったせいか、足に力が入らず
ふらふらしてうまくたつ事が出来なかった。でも洋服に着替えさせると帰れるのがわかったみたいで
よたよたしながらも自分で歩いて外に出ようとしていた。
帰り際詰所に挨拶に行くと、それまで看護師さんをみるとそっぽ向いていたゆずも「ばいばい」と手を振った。
看護師さんたちも「やっとえがおみせてくれたね~」と喜んでくれていた。
家に帰って自分の布団の上に横になると、ほっとした感じでごろごろ転がりながら布団のにおいをかいだりして、
自分の居場所を確認しているようだった。
退院してからは徐々に体力も戻ってきて、しっかり歩けるようになったし、テレビを見ながら踊ったりもするようになった。食欲もしっかり出てきて、食べれなかった分を取り戻すかのように食べて、退院時はほっそりしていた顔も体も、今では元通りよりちょっぴり大きいぐらいになった。便も退院後4日ぐらいで普通の色に戻った。
今となってはあの痙攣や入院中の事なんてなかった事みたいにすっかり元気になった。
今回のゆずの入院で、私も考えたり感じたりすることが沢山あった。
まずは、やっぱり健康はすごく大切なことだし、元気でいられるのは決して当たり前ではないんだと思った。
元気に生まれて、とくに大きな病気をすることもなく大きくなってきていたから、なんとなくこのまま成長していけるって思っていた。けど、元気にすくすく育っていける事は決して当たり前ではなくて、とても感謝すべき事なんだと気付いた。
そして、家族の大切さにも気づいた。今回の入院で一緒に頑張って支えてくれる旦那さんの存在が改めてたのもしく思えたし、家族の危機にみんなで力を合わせて乗り越えていくことの大切さにも気づけた。
毎日朝・夕面会に来てくれて、私の食事を届けてくれた旦那さんの両親や、心配してメールをくれたり、遠いところ会いに来てくれた両親や兄弟のありがたさも感じた。
毎日当たり前に過ごしている時間は、決して当たり前ではないんだという事。
看護師として働いていて、わかっているつもりでいたけど、やっぱりわかってはいなかったんだと思う。
自分が元気でいられる事、家族が元気でいられる事、当たり前の日常が送れる事、それはとてもありがたいことだった。
しんどいことも沢山あったけど、それに気づけた事は、すごく大きな収穫だった。
ゆずの退院後、ロタがうつってしまったようで私が嘔吐下痢になり、3日間ほど寝込んでしまい・・・
2週間かかってやっと家族全員元気になりました。
子供のウイルス恐るべし・・・皆さんもお気を付けくださいね