sea side...

言の葉…ふと感じたことを繰っていきます。短編小説や詩の様なもの。


恋文…大事な人(人たち)へのラブレターです。


塔…長編小説です。飽きずに読んで頂けたら嬉しいです。

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忘れ街《僕》4

「あなたが作り出した…」




老人はカラカラと少し笑って話を続けた。


「あくまでも例え話だよ。それくらいここのことは誰にも良く分からんのだ。わしが作り出したってのも勿論、可能性が0という訳ではないがな。お前さんも一度くらいあるだろう?世界が自分のために作られていて周囲の人間も皆自分のために何らかの意味を持って産まれて来たんじゃないかって錯覚に陥る。そんなもんだ。」





僕は少し老人の話したことを考えてみたが、ここがどこだか分からないということ以外、何を言わんとしているのか良く分からなかった。





「じゃあ、僕はどうしてここへ来たんだろう」





老人は少し難しそうな顔をして腕を拱いた。





「わしもそれが不思議なんだ。ここへ来る奴は皆はじめは、何かに悩み苦しんでおる。そしてとにかく前の世界へ戻りたがっておる。しかし、お前さんはそのどちらにも当て嵌まらないようだ。言わば、お前さんの出現はわしにとっておおいに不意打ちだな。」



そう言いながら老人は楽しそうに笑った。





「不意打ち…」





「ああ。不意打ちだ。長い時間をかけてようやくこの街の法則らしきものを見付けられる様な気がしていたんだ。それをあっさりと崩されてしまったよ。でも不思議なことに、一方でわしにはお前さんがこの街の謎を解いてくれる希望の光の様にも思える。」





「希望の光…」





「そう”a ray of hope.”だ。

…そうだ。お前さん、名前が分からないなら今日からレイと呼ぼう。」





「レイ…」





「嫌かい?」





「いえ、とても良い名前です。ありがとう。」





僕は頭の中を少し整理しようと思ったが、鈍い頭痛が再び襲ってきたので考えるのをやめることにした。





「レイ。動ける様になっても日が落ちるまで外に出てはいかんぞ。ここの日の光は危険だ。まともに過ごしたいなら絶対にいかん。もっとも、この世界じゃどっちがまともなのか分かりはせんがな。」





老人はそう言うといつの間にかすっかり平らげた鍋を抱えて奥の部屋へ戻って行った。







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